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「物を作る人から売る人へ、売る人から買う人へ、愛情のバケツリレーみたいな映画」まちの本屋 015🎬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0物を作る人から売る人へ、売る人から買う人へ、愛情のバケツリレーみたいな映画

2021年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「枕草子か徒然草しか面白い本がない」って、それって実質ただの吉田兼好やんけと映画館で絶叫しかけた。
(吉田兼好:徒然草の作者。枕草子のガチヲタであることを感じさせる文章が、著書の随所に見られている)

尼崎の商店街で書店を営む、カリスマ店主小林さんと彼女を取り巻く人々との物語。
全然知らなかったですが、この店主さん、かなりの有名人みたいです。
彼女の営む書店の名前は『小林書店』。通称『コバショ』。
帰宅してからいろいろとググりましたが、旦那さんとも元々はガラスメーカーに就職されていたようですね。
転勤するよりは家族全員で一緒の場所で暮らそう、と言う旦那さんの意向により、ご両親から書店を継がれたらしいです。

この小林さんの本の売り方が、半端ない。
まずはお手製のブックカバー。
その時の最推しの本から“これや!”と思った文章を書き出し、可愛らしいイラストとともにブックカバーを作成する。裏面にはコバショ通信的な書店情報を記載、本を一冊買ったお客さんが、ブックカバーのデータを基に、二冊目、三冊目と購入せざるを得なくなるような仕組みを作っている。

そして、小林さん自身が持つ、本に関する情報。
図書館の司書さん並みに本に関する知識が豊富。
「なんかおもしろいもんない?」と言われたら、即座に情報提供できるほど、相手の趣味嗜好に合わせた本の情報をいつも保有されている。

最後に、ビブリオバトル。
二か月に一度、店内で行われる“ビブリオバトル”にて、参加したお客さんに本のプレゼンをしてもらうことで、書店の売り上げに貢献してもらおうというエコでえげつない(褒めてる)企画。
読みたくなったら即購入をモットーに、今後も定期的に行われる予定。

そんな小林さん。
本と同時並行で傘も販売していますが、この傘に関する知識も相当なもののようです。
作っている人たちの一生懸命さを台無しにしたくない、だからお客さんには扱っている商品に関して「私は(この商品に関して何も)知らないとは言えない」とのことです。

作り手の愛情を、売り手として購入者に届ける仕事。

最近はネットで何でも買えたり、特に本の世界では、作者さんから読者がボタン一つで本(のデータ)を購入出来るような事態にもなってしまっているため、なかなか真ん中で働いている方々の顔や動きが見えない状況にあります。
ただ、彼らがいてくれるからこそ、私達購入者は膨大な対象から自分の好きな作家さんや本を選び取ることが出来るし、その繋ぎ手である彼らと感謝の気持ちで繋がることが出来る。

自分で選んだ本より、大切な人から勧められた本の方が、後々の記憶に残りやすいし、思い出としての付加価値も上がる。

人との繋がりの素晴らしさについて、改めて認識させられた素敵なドキュメンタリー映画でした。

BONNA