「カーン王朝(ダイナスティ)が迫り来る…」アントマン&ワスプ クアントマニア 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
カーン王朝(ダイナスティ)が迫り来る…
MCUフェイズ5開幕!
そのスタートを託されたのは、最小ヒーロー!
アントマンってアイアンマンやキャップやソーやスパイダーマンよりかはマイナーだけど、MCUに於いて結構重要な立ち位置や役割りを果たしている。
1作目はフェイズ2のトリ(個人的にはごちゃごちゃしていた『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の後、シンプルな面白さにMCUの株を上げてくれた)、2作目は衝撃ラストの『~インフィニティ・ウォー』と橋渡しし、『~エンドゲーム』では絶体絶命下の突破口。
作品自体も楽しく面白く、MCUの中で最も万人受け。人間味たっぷりのアントマン=スコットは勿論、ワスプ、ピム博士、誰より愛している娘キャシーなど登場キャラも魅力的。このファミリー感も特色。
実はMCUヒーローの中で特に好き。
最小ヒーローなんかじゃない。面白さも魅力もアクションのユニークさも、ビッグサイズ!
そんなアントマンがまたまた重要な役割りを受け持つ…。
すでに発表されている通り、2024年と2025年に『アベンジャーズ』の新作が2部作で公開予定。
内容やどんなヒーローが登場するかも気になるが、この時新たな巨悪にして強大な敵として立ち塞がるのが…、
征服者カーン。
その名が公表されると同時に早速Wikipediaで調べてみたら…、
3000年の未来から来たタイムトラベラー。過去・現在・未来、全ての時間をコントロールする事が出来、さらには全王様級の宇宙を存在ごと消し去る事も出来るという…。
あのサノスをも越えるという大ヴィラン。
でもこれらはあくまで“設定”であって、どんなキャラなのかまだまだ謎…。
配信ドラマなどでは存在を匂わせていたらしいが、映画では本作でいよいよ本格的に初登場。
新たな始まり、新たな強敵に、さあどう挑む、アントマン…!?
まず、話は…
人生は意味不明なんて初っ端から言ってるけど、スコットが言うと納得力あり。
元囚人。サーティワンをクビになるくらいのダメ男。
そんな彼がある日突然ヒーローになり、アベンジャーズとあのサノスと闘い、世界を救った。
今じゃ街の人から声を掛けられ、写真もねだられるほど。中には“虫違い”してる人もいるけど…。
でも何よりの喜びは、愛する人と巡り合い、愛する娘とも再会出来、“家族”が出来た事。
ほんと、人生って意味不明。でも、いい意味で。
さてさて、前作ではまだ幼かった娘のキャシー。“指パッチン”でスコットが“あっちの世界”に囚われていた間、5年も経てばそりゃあ急成長。身体が大きくなっただけじゃなく、科学者としての才も開花。
量子世界を探索出来るマシンを発明。
その実験中、謎のシグナルが。ジャネットが制止を叫ぶも、次の瞬間、スコットらは…。
吸い込まれ、スコットらが行き着いたのは、未知の量子世界。
これまでは量子世界に入り込むくらいだったが、今回はズバリ、この量子世界が舞台。
まずはその見た事もないビジュアル。
森…? 何処かの星…? 別の宇宙…?
奇妙で不可思議な世界が広がっている。
何だか『アントマン&ワスプ』を観に来た筈なのに、間違って『アバター』か『スター・ウォーズ』を観に来たような。
そうなのだ。
この世界にも“住人”はいる。量子人…?
ぶよぶよのアメーバみたいな奴とか、機械と生命体が融合してる奴とか、おでこが光るテレキネシスや勇猛そうな女戦士もいる。
その“遠い昔遥か彼方の銀河”に住んでそうな住人やクリーチャー、荒廃した地、お尋ね者や賞金稼ぎや荒くれ者たちがたむろしている村の雰囲気とか、メチャ『スター・ウォーズ』やん!
量子世界のさらに下に世界を内包した世界があると言ってたけど、量子世界のさらに下にあったのは、『スター・ウォーズ』的世界だった…!
ま、監督のペイトン・リードもド世代だろうしね。
スコットとキャシー、ホープとハンクとジャネットの“家族”で離れ離れに。
スコットとキャシーは村で一悶着。ジャネットの連れだと知ると、危険を訴える。“奴”が追ってくる…。その言葉通り、敵襲撃。敵って…?
一方のホープら。ジャネットはこの世界に来た時から…いや、吸い込まれる直前から様子がヘン。何かを隠している…?
が、黙して語らず、一刻も早くスコットらと合流し、この世界から脱出する。
とある人物に助けを求める。ジャネットがこの世界から抜け出せないでいた間に知り合った人物。何か訳あり…?
にしてもこのシーン、マイケル・ダグラスとミシェル・ファイファーに加え、ビル・マーレイ登場とは、80年代ファンには嬉しい顔触れ。
ここでも敵襲撃。どうやら狙われているのはジャネットのようで…。
量子世界に居た30年の間に、何があった…?
ようやくジャネットが重い口を開く。恐ろしい人物とここで遭遇した…。
ジャネットと同じく、量子世界に囚われた男。
“トラベラー”で科学者。
彼が乗ってきた船の力を借りて、科学者同士技術と知恵を使い、この世界からの脱出を目指す。
友情も芽生える。
いよいよ脱出の手筈が整った時、ジャネットは彼の本性を知ってしまう…。
彼は追放されてこの世界に閉じ込められた。
彼がしてきた事は、マルチバースを自由に行き来出来る船に乗り、時間さえも超越し、大量虐殺、星…いや、その宇宙そのものの抹消。
自分の前に立ち塞がる障害や邪魔者は容赦なく。
脱出の目的は、復讐。自分をこの世界に閉じ込めた奴らに。それが果たされたら、今度は全ての宇宙世界の脅威になるかもしれない。
彼は恐るべき“征服者”だった…。
ジャネットは自身の発明したメカとパワーコアで彼の脱出を阻んだかに見えたが…。
量子世界で帝国と軍を作り、キャシーのマシンのシグナルを利用し、今度こそ脱出を目論んでいた…。
絶対に彼をこの世界から逃してはならない。
一方のスコットとキャシーは遂に対峙する。
カーン登場。演じるは、『ザ・ファイブ・ブラッズ』『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』、今年公開予定の『クリードⅢ』でライバル役に扮するなど引く手あまたのジョナサン・メジャース。
ジョシュ・ブローリンが演じたサノスとはまた違った印象。サノスは見た目も含め圧倒的なインパクトを放っていたが…。
それもその筈。サノスは宇宙魔人だが、カーンは人間。
ならば倒せるのでは…? だったら、今後の大ヴィランになる筈がない。
一人の人間が強大な力を手にしたら…?
全てを征服しようとする。全てを意のままにしようとする。
普段は冷静沈着だが、激昂すると暴走するフリーザタイプ。クライマックス戦でも、誰彼構わず消し去っていく。
サノスは確かに強敵だったが、野望や激しい感情を持ち合わせているからこそ、厄介なのだ。
キャシーを人質に、スコットにミクロ化してパワーコアを取ってくるよう強要するカーン。
娘を助けたいスコット。
カーンの野望を阻止したいホープら。
強大な巨悪との初戦の行方は…!?
量子世界でもミクロ化したり巨大化したりの大小アクションは健在。
が、今回はアクションのユニークさよりビジュアル推しだった気がする。
“アントマン&ワスプ”のタイトルながら、各々アクションし、前作ほどの抜群のコンビネーション・アクションでは…。スコットもユニークな魅力や能力を活かしきれていたとは言えず、ワスプに至っては今回印象薄…。寧ろ奮闘していたのは、キャシー。いつの間にか彼女もスーツを。父娘でのアクションや彼女の成長や活躍。演じたキャスリン・ニュートンもハツラツと。“アントマン&ワスプ:クアントマニア(=量子世界)”と言うより、“アントマン&キャシー:カーン登場”って感じだったけど…。
ここで会ったが100年目。量子世界で思わぬキャラと再会! 引くくらいのビッグフェイスと姿になって、相変わらずクソ野郎だった。まあでも最後にはキャシーによって…。
飲まされた“トロトロ”。“ほんやくコンニャク”ならぬ“ほんやくトロトロ”…? 無数のスコットが集うシーンも、過去・現在・未来のドラえもんが喧嘩する某エピソードみたいだった。
今回もアリたちが大活躍!
アクション、ビジュアル、家族ドラマ…と、今回も面白かったのは面白かったが、前2作のような痛快な面白さではなかった。敵が敵だけに『アントマン』にしてはシリアスで、これまでのようなシンプル娯楽活劇を期待すると…。
カーンや量子世界には興味惹かれるが、『アントマン』本来の持ち味である楽しさがちと欠けた。
今回MCU作品にしては批評が鈍いのもそれが原因なのかな…?
とは言え、期待外れやがっかり残念ではなく、もう一度言うが、面白いのは面白い。
今後、アントマンやカーンがどう絡んでくるのか…?
新たな強敵との初戦は、アントマン・ファミリーの勝利。
小さき者を見逃すな。小さき者は諦めない。
って言うか、こんなに持ち上げた割りに、カーン最後は倒されるんだ…。
確かに強敵だったけど、意外と拍子抜け。他のヴィランと変わらんのではと思っていたら…。
恒例ED後のオマケ映像で実は生き延びていて、復讐に燃えると思っていたら…。
最後は衝撃の展開。今回倒したのは、カーンのたった一つの存在にしか過ぎなかった…!
無数に広がるマルチバース。そこには…。
“カーン王朝(=ダイナスティ)”が迫り来る…。