「祖国存亡の危機の中、"王女"は"女王"になれるのか...  弱り目に祟り目な少女の姿がただただ痛ましく、かつてない悲愴感漂うスーパーヒーロー映画」ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0祖国存亡の危機の中、"王女"は"女王"になれるのか...  弱り目に祟り目な少女の姿がただただ痛ましく、かつてない悲愴感漂うスーパーヒーロー映画

2022年12月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 4年前の『ブラックパンサー』の続篇ですが、ティ・チャラ / ブラックパンサー役のチャドウィック・ボーズマンが撮影前に病没し、なんとリキャストせずに作中でもティ・チャラが病没するというボーズマン氏への製作陣からの大いなるリスペクトを背景としたシナリオ変更が為された稀有な作品。
 彼を喪ったファンと製作陣、そして作中キャラクター達の悲しみが作中全編に横溢しており、ヒーロー映画に必須の爽快感が鳴りを潜めているどころかその真反対の悲愴感が満ち満ちた異様な仕上がりになっています。
 前途有望な若き国王であったティ・チャラ/ブラックパンサーを失ったワカンダ王国が、超資源ヴィブラニウムを狙う諸外国や余所者に容赦の無い海の王国タロカン帝国ら火事場泥棒的な害意に見舞われる、というなんとも不躾な展開。
 前作ではワカンダの王位継承に伴う内乱が描かれましたが、今回は国家間の諍いがメイン。しかも各勢力とも甚大な被害を被るも、狡猾な立ち回りと巧みな恫喝に長けたサイドが傷を小さく抑えて虎視眈々と覇者的立場を狙う、という現実世界に即した実に厭なパワーゲームが終始展開され、ティ・チャラの遺した国を守ろうと"想い"で立ち向かおうとする妹シュリとワカンダの民たちの高貴さが蔑ろにされるどころか付け込まれる様がなんとも居た堪れない限りです。
 『ブラックパンサー』としての続篇はかなり先でしょうから、数年後にでも新生アヴェンジャーズ作品にて逞しくなった彼女とワカンダの雄姿を見せて欲しいものです。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)