劇場公開日 2021年7月30日

「宇宙の命運はイカれた少女の手に託された」サイコ・ゴアマン よしえさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5宇宙の命運はイカれた少女の手に託された

2021年7月30日
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鑑賞方法:映画館

ミミとその兄ルークはクレイジー・ボールでの勝負の果てに庭から最凶最悪の悪魔を掘り当ててしまい……って真面目にあらすじを書くのもはばかられる程のファナティックな映画。
実際、このミミの傍若無人を絵に描いたようなイカレっぷりが凄まじくて、おかげで苦手なはずのゴアやスプラッタ表現が全く苦にならない。途轍もない化け物を掘り当て、凄惨な殺人現場を目の当たりにしてもこゆるぎもしないミミの精神強者ぶりに比べ、まともゆえに割りを食ってばかりのルークが本当に気の毒になってくる。
気の毒なのはサイコ・ゴアマン略してPGも同じで、宇宙一の最凶生物が少女に振り回され、過去の残虐ぶりを話して聞かせようにもあっさりと流され、挙げ句の果てに生命の危機にまで晒されるのだから、同情する他ない。

監督は日本の特撮が大好きだそうで、それも東宝や円谷プロのような世界でもリスペクトされる王道作品ではなく、ライダーや戦隊のいわゆる東映特撮に愛着があるらしい。そう言われてみると、PGをはじめとした宇宙生物たちの姿や映像表現にその片鱗が見え隠れする。そういう意味では、東映のいい意味でチープな特撮に慣れ親しんだ日本でこそ、この作品が受け入れられると良いのだが。

なお、なんとなくほっこりするような良いシーンで終わったせいで、暖かな気持ちで映画館を後にしたが、考えてみるとこの後どうなるんだろう……いや、そんな先のことを憂いても仕方がない。どうであれ、ミミ一家には平穏が訪れたのだから。

よしえ