「歴史的にも、映像価値的にも見応えがある」サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時) 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
歴史的にも、映像価値的にも見応えがある
歴史的にも、映像価値的にも見応えのある作品だ。埋もれていた映像がいまこうやって映画となって多くの人々の関心を集めている状況を見ると、69年当時の(商業的な)無関心が嘘のようだ。ウッドストックと同年に開催され、同時間帯には史上初めて人類が月面に着陸。しかし「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」に参加した30万人を超える観客にしてみれば、こちらの方こそが明かな「表舞台」と言えよう。本作はスティーヴィー・ワンダーをはじめとするミュージシャンたちのソウルフルな演奏を伝えつつ、このイベントの仕掛人たちや、開催した意図、警備を担うブラックパンサー党の存在、さらには観客側のファッション、階層、ステージ側から見た多様性、文化的な意味などについても考察。決して頭で理解するドキュメンタリーではなく、体と心で感じながら、伝説となった69年、そしてあるべき未来に思いを馳せる。そんな力強い一作に仕上がっている。
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