「香港、台湾、中国の姉妹」花椒(ホアジャオ)の味 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
香港、台湾、中国の姉妹
今、香港からこの物語が届くことに切実さを感じてしまう。
父親が死に、残された料理店を3姉妹が切り盛りすることになる。姉妹はそれぞれ存在を知らなかった。1人は香港、1人は台湾、そしてもう1人は中国本土の重慶で暮らしていた。父の葬式で初めて顔を合わせた3人は、距離感を掴みかねながら、次第に心を近づけていく。
父の火鍋の味を探ろうとする3人の気持ちが、それぞれが知る父の姿を探る姿と重なり、家族のあり方を見つめ直していく。美味しそうな料理がたくさん登場するので、眼福だ。
本作には今の香港をめぐる政治的な要素は描かれない。しかし、台湾と香港と中国本土出身の3人の女性が、1人の共通の父というルーツを持ち、互いの人生を見つめ直すという物語の構造そのものに、何らかの願いがこもっているのではと思わずにいられない。そういう描き方の方が、直接政治的な題材を扱うよりも人々の心に響く何がある時もある。
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