「薄明の中で」SEOBOK ソボク Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
薄明の中で
街も道路も、部屋も港も、すべてが薄明かりの中にあった。この暗いけれど美しい映像が、先の見えないクローンの行く末と、霧に包まれた生と死への問いかけを象徴していたようです。
研究所からの逃避行で、自分の存在理由を問うソボクの呟きが繰り返される。作品によっては設定上、悩まないクローンも数多いけれど、ソボクはこの問いに答えはないと知りつつ、必死に悩む。
最初は男の子にも女の子にも見えたソボクが、ラーメンを食べたり、出血して身に危険が迫ってもギホンに逆らったりして、次第に「少年」に変化していく。
このへんで、3組によるソボク争奪戦になったし、そこを上手くすり抜けて、条件付きのハッピーエンドもあるかなとか、あれこれ予測していました。
でも、教会を訪ね自分にもヒトの時があったことを確かめ、それをギホンに理解してもらうことが、ソボクの終局点だった。ソボクにはギホンを救いたいと言う願いもあり、二人で研究所にUターンする。
ギホンは結局、最後まで自分の命の救済は捨て切れない。でも、ギホンの人間らしい自然体があったから、あまり無理なくストーリーについていけたのも、事実です。
ソボクの超能力の由来については説明がなかったけれど、それを奮ってのアクションシーンは息詰まる迫力。テレキネシスと言うか「場」そのものを捻じ曲げてグシャッと人を押し潰すパワーは、吹き飛ばすより遥かに恐ろしかった。そして、機関銃の弾丸も跳ね返すガード力。
激闘シーンでも、薄明かりが効果的だった。ソボクの周りの凶暴な空間が、視認されないまま襲いかかってくる。
思わず、Xメンのマグニートーと戦わせてみたいと思ってしまいました。
ガードを自ら取り払ってギホンに撃たれるソボク。ソボクの血を得ていないギホンの行く場所はどこだろうと言う、虚無感に満ちた終焉。