「ジョニデはいない」MINAMATA ミナマタ しゅなさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョニデはいない
アメリカ人写真家
ユージン・スミスのフォトエッセイを元に
水俣病を題材に映画化された真実に基づく作品
今作にはあのハンサムでオシャレなジョニー・デップはいない。
ユージンのファンであったジョニーが自ら映画化を切望し、制作・主演した今作は、彼の遺作となった写真集
『MINAMATA 』がいかにして作られたのかが描かれていて、ドキュメンタリーの要素もある。
ニューヨークの片隅で飲んだくれて過ごし、別れた子供達に幾ばくかのお金を残すために、商売道具のカメラや機材を売り払うまでに落ちぶれていた、かつては名声を得たカメラマン。ユージン。
LIFE誌での厄介者であり、唯一無二の高潔なカメラマン。
彼が水俣で起こっている事の重大さを世界へ知らしめたいと突き動かされ、熊本県で過ごした3年間。
どのシーンも彼の瞳のファインダーを通すと美しくて愛おしい世界に映る。
胎児性水俣病のために生まれつき目も見えず、耳も聞こえず、話すことも笑う事も出来ない少女、アキコを「1時間だけ見ていて」と託され、戸惑いながら慣れない手つきで彼女を膝に抱き、子守唄のように口ずさむ
ボブディランのForever Young
神様が君を祝福し、いつも見守ってくれますように…
…
君が星へと続くハシゴを作り、
その一段一段を登っていけますように…
とてもとても美しいシーンで涙が出ました。
1枚の写真に計り知れない思いを費やし、
撮る側の責任を果たそうと、真摯に向き合うカメラマン。
ユージンが世界に発信した数々の写真によって世論が動き
大企業が動いた。
未だに解決を見ない公害問題を題材にしているだけにテーマは重い。エンドロールでは世界中の公害問題を取り上げ、声を上げる事の大切さを語っている。
ジョニーデップは演じるというより
ユージンだった。