「國村隼で満点」MINAMATA ミナマタ kwmdさんの映画レビュー(感想・評価)
國村隼で満点
日本人ならみんな知っている水俣病ですが、水銀と生体濃縮というキーワード以外は知らないのではないでしょうか。作品はユージン・スミス自体が中心なので『事件』自体を詳しく描いているわけではありませんが、外国のカメラマンがからんでいるとは知りませんでした。これだけでも、十分見る価値があります。
日本で撮影されておらず、水俣市での上映会に水俣市が協賛していないなど、政治的な臭いがしなくもありませんが、全く『反日的』ではありません。最後まで見ればわかります。念のため。
良く言われている通り、住宅の外見が日本らしくない点と子役がおそらく日系ハーフのようで芋臭くない(マジ泣きして可愛いです。)点以外は、昭和の日本の再現度は高いです。謎な日本語や、不自然なお辞儀や、中華風の無いそうはありません。衣装も知っている範囲では昭和らしく、色調もあっていると思われます。実際に撮影された写真に合わせて映画を撮っているからだと思います。これだけでも、結構大変だったのではないでしょうか。
ジョニーデップが普通に演技がうまくてびっくりです。変な人をより変に演じることが多いですが、普通の人に見えます。当のスミスはとっても変人のジャンキーらしいのと反対です。
最初の方で、壁にセロニアス・モンクの写真が貼ってあり、モンクのピアノソロが流れます。どうやら、スミスは1950年代はジャズメンの写真を撮っていたようです。黒人を撮るのと同様にコントラストの強い白黒写真で、水俣の人を撮影しているので、非常に印象深い写真になっています。確かに写真の力で世界の関心を集めることが出来たのだと思います。
日本側は、浅野忠信・真田広之・國村隼(熊本県人!)とよく外国映画に出ている人たちです。完全に日本映画での日本人役と遜色ありません。とくに、國村隼の表情での演技が素晴らしかったです。これで満点をあげたいです。真田広之と國村が直接対決するのですが、血みどろの戦いはありませんでした。
音楽は坂本龍一ですが、彼の映画音楽のなかで一番好きかも知れません。印象的でちょっと謎なテーマフレーズとかはなく、それがむしろ印象的です。
日本映画だと『感動の』『涙が止まりません』とかになるところを、おさえて、しっかりした作品で僕は好きです。激しい展開や強いカタルシスはないので、万人向けではありませんが。日本の映画会社が、日本で撮影し、このクオリティーで作れなかったのが残念でなりません。もちろん、お金があっても作れないと思いますが。