「ザック・スナイダー リターンズ。 アブラマシマシ激濃ザック汁一丁お待ちどお!!」ジャスティス・リーグ ザック・スナイダーカット たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ザック・スナイダー リターンズ。 アブラマシマシ激濃ザック汁一丁お待ちどお!!
スーパーヒーローが一堂に会するアメコミアクション映画「DCEU」シリーズの第5作『ジャスティス・リーグ』(2017)のディレクターズ・カット版。
監督/原案はザック・スナイダー。
○キャスト
ブルース・ウェイン/バットマン… ベン・アフレック(兼製作総指揮)。
クラーク・ケント/スーパーマン… ヘンリー・カヴィル。
ダイアナ・プリンス/ワンダーウーマン… ガル・ガドット。
アーサー・カリー/アクアマン… ジェイソン・モモア。
バリー・アレン/フラッシュ… エズラ・ミラー。
バルコ… ウィレム・デフォー。
ロイス・レイン… エイミー・アダムス。
ジョーカー… ジャレッド・レト。
メラ… アンバー・ハード。
ジェームズ・ゴードン… J・K・シモンズ。
レックス・ルーサーJr. …ジェシー・アイゼンバーグ。
製作総指揮はクリストファー・ノーラン。
『ジャスティス・リーグ』の制作中、止むに止まれぬ事情により途中降板したザック・スナイダー。
それを引き継いだ『アベンジャーズ』(2012)の監督ジョス・ウェドンは無事映画を完成させ公開まで漕ぎ着けたのだが、興行的にも批評的にも芳しくない結果となってしまった。
そんなこともあって、DCファンの中でザック版『ジャスティス・リーグ』の公開を求める声が噴出。それはSNSを中心に大きなムーヴメントとなった。そしてその声に応える形で、ワーナー・ブラザースとDCはザック・スナイダー版の公開を決定する。
本作はワーナーが新しく始めた動画配信サービス「HBO Max」でリリースされたのだが、製作決定の裏側にはこの新サービスの目玉となる作品が欲しかったという会社事情もあったのだろう。
公になる前から、ファンの間ではその存在が噂されていたザック・スナイダー版『ジャスティス・リーグ』。確かに、撮影素材を編集したものがザックの手元にあったのは事実なのだが、それを映画として完成させるにはやはり素材が足りない。そこでワーナーは追加予算を捻出。ザックは散り散りになったキャストに再集合の号令をかけ足りないピースを撮り直し、それを再編集することによりついに想定していた通りの『ジャスティス・リーグ』を作り上げることに成功したのである。
ファンの要望に映画会社が応え、キャストもその意を汲んだ。異例中の異例とも言えるこの一連の動きは、途中離脱せざるを得なかったザック・スナイダー監督へのサプライズプレゼントのようなものであり、ファンの声がそれを成し遂げたという意味ではなかなかの美談であると言える。…ただ、一部のトキシックなファンが迷惑行為や暴言、脅迫などを行い問題となったのもまた事実。凶暴化したファンの声に応えるのは本当に正しいのか、ネットリテラシーやファンダムのあり方について考えるきっかけにもなるムーヴメントだったように思います。
さて、ここから本作の中身について触れていきたい。
この作品の最大の特徴……。それは長さだっ∑(゚Д゚)!!
そもそも、ディレクターズ・カット版というのは往々にして長くなりがち。他のスーパーヒーロー映画を例に出してみると、『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014)のディレクターズ・カット版である『ローグ・エディション』は、オリジナルが131分だったのに対して149分。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)のディレクターズ・カット版である『THE MORE FUN STUFF VERSION』は、オリジナルが148分だったのに対して160分。それぞれ大体10分くらい長くなっている。
まぁ長くなるといっても大体10分や20分くらいが普通。それじゃあ本作はどうなのかというと…。
オリジナルが120分なのに対し、『ザック・スナイダーカット』は240分。……240分んん!!??
上映時間はまさかの2倍。こんなん後にも先にも聞いたことがない。無茶苦茶もいいところ💦
ただこれ、内容が6章仕立てになっていることから察するに、元々はドラマシリーズのような形で配信するつもりだったんじゃなかろうか。それじゃあインパクトに欠けるというワーナーの意向もあってこんなクソ長モリモリ映画になったんじゃないだろうか。
一本の映画だと思うと長く感じるが、ドラマだと思えばまぁこんなもんだよね、という気もする。
ちなみにこの映画、DVDやBlu-rayだと〈前編〉と〈後編〉に分かれている。なら最初から前後編で公開しろよと思うのは私だけ?
120分も長くなっているのだから、はっきり言って中身は全然別物。ストーリーラインは変わっていないのだが、各キャラクターの背景がボリュームたっぷりに描かれているため、物語の解像度が格段に上がった。
特に印象が大きく変わったのはサイボーグとステッペンウルフ。オリジナル版では何なのかよくわからないキャラクターだったが、このザック版でようやく彼らの人物像を理解出来た気がする。
本作はただ尺が伸びただけではない。画面サイズからグレーディングにまで修正が施された、正にザック濃度1,000%なザ・ザック映画。アブラマシマシな映画界の二郎系ラーメンである。もちろん、ザック映画の特徴であるスローモーションもガンガン使われています。くどいっ!!
ブルース・ウェインの髭剃りまでスローモーションにする意味は果たしてあるのか?スローモーションを少なくすればそれだけで1時間くらいはランタイム変わったんと違う?
スーパーマンのスーツがブラックだったり、ステッペンウルフの鎧がなんかギザギザのビガビガだったりと、キャラクターのコスチュームが違うというのも本作の拘りポイント。
それだけならまだしも、オリジナル版には登場しなかったキャラクターが多数追加されており、彼らの存在がオリジナル版との最大の違いであると言える。
悪の帝王ダークサイドや謎の火星人マーシャン・マンハンターといった新キャラクターを大胆に投入してきたのにも驚いたが、最大のサプライズはやはりジョーカー!🃏
バットマンとジョーカーの絡みって、このDCEUでは初めてなんじゃなかろうか?時は来た!それだけだ…って感じでテンション上がっちゃった!…にしても、ジョーカーのメイクがしれっと『ダークナイト』(2008)仕様に変わっているような…。『スーサイド・スクワッド』(2016)のチンピラ風はダサいと気付いてもらえたようで何より何より。
地味に驚いたのはウィレム・デフォー演じるバルコが登場していたこと。バルコの初登場は『アクアマン』(2018)であり、オリジナル版『ジャスティス・リーグ』には登場しなかったキャラである。『アクアマン』で唐突に登場したバルコに少々違和感を覚えたのだが、今作を観て納得。出演シーンカットされていたんだ…😅
アトランティスの現王への言及も為されていたし、『ジャスティス・リーグ』は次作である『アクアマン』への布石としても機能するはずだったんですね。
ダークサイドの侵攻、マーシャン・マンハンターの警告、ジョーカーとの共闘と、一気に風呂敷を広げまくった本作。ここまでやられると次回作が気になるのが人情というもの。
それじゃ、この次があるのかというと…。はいDCEU自体が閉店してしまいました。
風呂敷を広げるだけ広げてそのまま放置。「オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな。このはてしなく遠い男坂をよ…」未完!みたいな車田正美状態をハリウッド映画でやられるとは思わんかった。
こんなに長い映画を観させられた挙句打ち切りエンドって、観客からしたらたまったもんじゃない。下手に風呂敷を広げずに一本の映画として完結させてもらいたかった気もするが、まぁそこはザックだからね。しょうがないね。
本作を「壮大かつ重厚な超大作」と捉えるか「クソ長くて辛気臭い監督のマスターベーション」と捉えるかは観客次第。
ただ、薄味でペラペラだったオリジナル版に比べると監督の作家性が全開になっている本作の方が見応えがあるのは確か。キャラクター描写が濃厚なだけあってジャスティス・リーグのメンバーにも愛着が湧いたし、なんだかんだで結構楽しめたような気がする。
オリジナル版とザック版、どちらか一方をオススメするのなら自分は間違いなくこのザック版を推す。ただ一気見だと流石にダルいので、DVDをレンタルしてきて前後編を2日に分けて観るという鑑賞方法がベストなのではないでしょうか!
本作は父ザックから亡き娘オータムに捧げられている。この映画が「父と子」の物語だったのは、やはり娘への想いがあるからなのだろう。クライマックス、サイボーグへと贈られた父親からのメッセージは、ザックがオータムへと伝えたいことだったのかも知れない…😢