東京自転車節のレビュー・感想・評価
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洗練されたシステムの奴隷にされてしまう人間
これは必見。コロナ禍で仕事のなくなった若い映像作家が、出稼ぎ目的でウーバーイーツをやることにして、最初(2020年4月)の緊急事態宣言下の東京を自転車で駆け巡る。出稼ぎでやっているのに全く金がたまっていかない。雨の日もカンカン照りの日でもせっせと自転車を漕いでいく。でも、その日暮らしがやっと。
その日暮らしになってしまうのは主人公自体の駄目さもある。もっと計画的にふるまえればもう少しお金貯まるんだろうという気もするが、この世の中はだれもが合理的に動けるわけじゃない。
というか、ウーバーイーツみたいな「便利な」サービスは合理化の権化のようなところがあると思う。合理的というのは、今の社会では「人間的」なものよりも価値のあるものになってしまっている。人間くさい主人公がそんな合理的なものの「奴隷」にされてしまう現実がありありと映し出されている。
ウーバーイーツの配達をやりすぎて、最後の方はちょっと正気を失ったような感じになっていく。チャップリンの『モダン・タイムス』にも通じる皮肉と狂気が宿った作品だ。チャップリンの時代よりも、現代はさらにシステムは洗練され、人間はシステムの一部として振舞わないといけなくなっている。青柳監督のような人間くささは失われるしかないのか、非常に鋭い問いかけをしている作品だと思う。
【コロナ禍の中、地方から出て来て、ウーバーイーツとして働く青年を追ったドキュメンタリー。青柳拓監督がリアルなコロナ禍の東京を捉える映像が、当時の状況を見事に伝えた作品である】
ー 緊急事態宣言下の東京で、自転車配達員としての日常を記録したドキュメンタリーー
■2020年3月。山梨県で暮らしていた青柳監督は、コロナ禍で代行運転の仕事を失い、家族が止めるのも聞かずに東京へ出稼ぎに出る。ちょうど注目されていた自転車配達員として働き始めた彼は、自らと人影がまばらになった東京を撮影し始める。
◆感想
・全編スマートフォンとGoProで撮影された疾走感と躍動感あふれる映像が印象的である。
<青柳拓監督がリアルなコロナ禍の東京を捉える映像が、当時の状況を見事に伝えたドキュメンタリーである。>
チップは渡さんといかんな。
水道橋博士のYouTubeで
知ったドキュメンタリー。
配信レンタルで鑑賞。
いやー、これは名作です。
’
コロナ過で仕事を失った若者が
東京でウーバーイーツに挑み
右往左往する様子を描いた作品。
監督自らが主人公なのだが、
一見優しくて可愛くて頼りないキャラに
見えるが、いやいや青柳さん、なかなかの
演出家。
自然体に見せながら意識的にキャラを想定し、
ノンポリを表明しつつ、今の日本を
猫パンチのような柔らかさで打つ。
’
笑わせながら、自分をアホに落としながら打つ。
末期的な資本主義に、小さな中指を立てる。
でも多大な奨学金も事実、ウーバーで必死に
自転車を漕ぐ人たちも、ほんと。
64歳になったオレも大して変わらない。
’
せめて今度ウーバをお願いしたときは
チップを送ろうと思った。
たぶん少額だけど、ごめんね。
’
エンターテイメント性の強いドキュメンタリー
昨日、江戸川のメイシネマで鑑賞。
2020年頃の話ですが、当時の空気を忘れていることが多いことに気づきます。いろいろな方法での記録が大切だなあとまず思いました。
さて、内容ですが、これはドキュメンタリーなのか、フィクションなのか観ていてわからなくなります。それだけエンターテイメント性が強いということです。主人公が自転車で上京する場面。俯瞰の映像が入ります。これは昨日監督さんも話されていましたが、事前にこういう作品を撮ろうとと意図して撮っているということ。私は映画は素人なのでドキュメンタリーはどんなものもそんなものだよと言われてしまえばそこまでなのですが、若干予定調和的に感じてしまいました。
この監督は当時本当に生活に困っていたのかどうか、その辺のリアルがあまり感じられなかったんですよね。
プロレスにしてもこれはエンターテイメントだよって提示されるのか、ん?これはもしかしてガチか?ってものを見せられるのか。好みだとは思うんですけど、安心して、気楽には見れました。
今後の作品も期待しております。
悲哀
自転車が趣味なのとウーバーイーツに興味があるので観たかった映画。
監督が若い!
あと、奨学金という名の借金がエグい。
これ絶対返せないだろ……。
親も家もあるのに、なんともならないんだ……。
そしてコロナは、弱い者ほどダメージを受けるということ。
特に若い人。
とりあえずこの映画が売れて(?)良かったなぁ。
コロナのある世界線を描いた、数少ない優良インディーズ映画
コロナ禍において多くの映画人が「こんな時だからこそ何か映画を作らなきゃ」と創作意欲を刺激されたと思うんですが、そういう謳い文句のインディーズ映画のほとんどが駄作だと思っています
まずコロナが無い世界線の話を描いてる映画はすべて駄作と言い切れます
元々考えていた企画や脚本を文化庁の補助金を得ることで制作できるようになっただけで、コロナ禍が物語には一切反映されてません
物語中で登場人物がいちいちマスクや感染対策していたら話が成立しないのは分かりますが、だったら今、わざわざ作る存在意義がどこにも有りません
コロナ禍を引き合いに出して熱意や意欲をアピールするほど、こちらは白けてしまいます
この類いの映画はインディーズでも”商業映画”だと言い切って欲しいです
商売だったら、こっちも何も文句は言いません
そして、リモートという表現技法を使った映画
これもすべて駄作です
技術的に目新しく映るだけで、技術があるだけの映画を映画とは呼びたくありません
そんなもの、どんな映画にだってその時の目新しい技術は何かしらありますから
それに元々リモートはあったし、なんなら「サーチ」という傑作がコロナより前にもうあったので、それよりさらに面白くないと存在価値がありません
画面越しにやりとりさせていればコロナ禍に作った映画の意味がある、わけはないです
そこにメッセージが無いし、リアルに会話させた方が圧倒的に面白いんですから
そんな中で今作の、コロナ禍でUber Eatsで働く監督自身を題材にしたドキュメンタリー映画
コロナのある世界線で、今作る存在意義があって、リモートという技法の目新しさには一切頼ってない、前提条件はすべてクリアしていて完璧です
非常に興味深く拝見しました
2021年のみならずコロナ禍を代表するインディーズ映画と言って良いでしょう
ただ、ドキュメンタリー映画にも関わらず、演出過多(デリヘルの下りは特に)というか、編集で時系列(自転車のパンク前後)を作為的いじったというか、物語を盛り上げる上でマイナス情報になるUber Eats料金体系(クエスト?は最初からありますよね)の一部を意図的に隠したというか、その辺がドキュメンタリー映画作法としてあるまじき部分が見て取れたので、この点数にしました
ドキュメンタリー映画じゃ無くてモキュメンタリー映画なのかもしれませんが、クリエイターがご都合でドキュメンタリーやモキュメンタリーを行き来して楽をしていたのなら最低です
もっと点数を下げます
監督本来の人間性を存じませんが、社会制度や政治が悪いせいで、本人は真面目に頑張ってるのに何故か貧乏、な方が良かったと思います
現在だと、監督がそこそこなダメ人間に見えるので、まぁコイツじゃこうなるのは必然だな、としか思えませんでした
監督がキャラを演じている訳ではないならば、他の貧困層の若者を主役に立てて、その人に監督が密着する形のほうが良かったですね
コロナでなければ…🚲
コロナ禍で、日本中が疲弊している中、地元から東京に出て、Uberで一発夢見る🌟
ちょっとしたわらしべ長者のよう…
🍟一個や、タピ入り茶2個だったりを配達して収入を得る…コロナ禍の今を象徴したかのようだ
興味深く
身の回りにUberを頼む人も頼まれる人もおらず、仕組みや稼ぎ、何よりサンプルとして捉えていいのかどうかわからないが、若者の思考や指向がたいへん興味深かった。
ドキュメンタリーとしては、まあ…うん、という感じ。コロナを嫌がるくせに監督を泊める友人が収入をどこから得ているのか、その住まいはどういう経緯で彼のものなのかなど謎でよかった。
ラストは急に社会派?的になり、蛇足だと思った。クエスト達成〜日常は続くでおしまいでよかったんじゃないかなー。
自分ごと 他人ごと
セルフドキュメンタリーとして、自分自身がUber EATSの配達員として自転車で走り回る映画。
根底には、奨学金という名の借金返済と、新型コロナの影響で、地元山梨県では稼げない、ということがあったらしい。
Uber EATSの配達員の〈労働条件〉などの〈労働問題〉をえぐり出すことをしていない。(垣間見ることはできる)
〈使い捨ての労働者〉という側面もあるなーと頭では理解していても、「だから、どうなんだ」という、どこか他人ごとのように感じている部分も映し出されている(と、ボクは思った)
奨学金(という名の借金)を20代の青年に背負わせているという現状を告発しているわけでもない。
どこか他人ごとのように思いながら、とにかく日銭を稼いで、食べていかなきゃならない。
そんな様子を淡々と映し出す。
稼がなきゃ行けないのに、サボってしまったり、奨学金を返済しなきゃ行けないのに、お金があると、つい使ってしまう。
そんな人間の弱さみたいな部分も隠さずに映し出していた。
(おそらく)いつの間にか、他人ごとのように考えていたものが、自分ごとになっていき、「どうやら自分だけで解決できる課題ではないぞ」という思いが、ラストシーンへこめられている、とボクは思った。
青年・青柳拓さんはきっと優しい青年なのだろうなあ。
おばあちゃんに心配させまいとウソをついたり、家に泊めてくれた友人から追い出されたわけではないのに、自分から気をつかって出ていったり。
〈うれい(憂い)〉を知っている人だけが、きっと〈優しさ〉を身につけるんだろう。
その優しさが強さにつながって、クエストを達成させたのかもしれない。
そんなことを思った映画でした。
絶対に今見るべき作品
2020年、緊急事態宣言下の東京を映しながら淡々と進んでいくようにみえるが、
確実にテンポよく掻き立てられるように進んでいっている。
はっきり言うと主人公であり監督であるアオヤギはダメな人間だ。
ただ、それは誰しもが持っているものであったり、隠しているものでもある。
でも彼はすべてをさらけ出し、ただひたすらに進んでいく。
追いてかれそうになる自分に焦りを感じながらなんとか彼の映像についていく。
くそダサいけどくそカッコいい。
コロナ禍を生き抜くリアルドキュメンタリー映画映画
山梨に住む1人の青年。コロナの影響で仕事がなくなり、自分の生活のため、家族のため、金を稼ぐことを目的に所持金も少ないなか、ウーバーのバックを背負い東京に乗り込む。そこには涙あり(少し)、笑いあり、真面目な部分もありのストーリー展開で終始楽しめました。
私としてはキャラが濃い友人達との会話がめちゃくちゃツボでした。
映画鑑賞後に監督の舞台挨拶もありましたが、監督の人の良さ、面白さがイメージのままでした!
とにかく面白かったです!
ウーバーイーツ節
コロナ渦に巻き込まれかなり底まで行った青年のドキュメンタリー。
私も失業しなかったが同じくウーバーイーツの配達員をしていて、同じ緊急事態宣言下の東京を自転車で走ったので、かなり気持ちが通じる部分が多かった。
ありとあらゆる仕事のオファーが失くなり、ウーバーイーツが唯一残った仕事だった2020年の空気感が濃厚に取り込まれた作品です。
印象的だったシーンは借金の催促の電話。
都会は孤独の集まりだ
孤独である。孤独だがやるべきことをやるしかない。雨の中、言うことを聞かなくなりそうな脚を無理矢理に動かして自転車を漕ぐ。なにがなんでも商品をお客さんに届けるのだ。店から預かった大切な商品。店にもお客さんにも信義を尽くさなければならない。それが配達員の矜持じゃないか。
それにしても今日はどこで寝るのだろう。いや、そんなことは最後の配達を終えてから考えよう。友達のところか、奮発してアパホテルに泊まるか、いや持ち金がない、ガード下の歩道で横になるか。寝る場所なんてどこでもいい、何時間か眠れば朝が来る。そうしたらまたスマホの電源を入れよう。すぐに配達の依頼が来るはずだ。
山梨から東京まで自転車で行くのは時間的にも体力的にも大変だろう。それ以上に、所持金8,000円で何の伝手もない新宿で生きていこうとする覚悟が凄い。友人たちはその覚悟に動かされて協力したのだろう。
政治が発表することは朝令暮改で何を言っているのか殆どわからない。政治なんか放っておいて、今日を生きるしかない。しかし今日を生きることのなんとしんどいことか。金を稼ぐってこんなに大変だったか。山梨で代行をやっているときはそれほど大変じゃなかった。コロナは世の中をこんなに変えてしまったのか。
最近の動画カメラGoProはとても優秀で、自転車で疾走する様子をブレずに撮影できて、驚くほど臨場感がある。それ以上に驚くのが青柳拓監督の若い体力だ。よく頑張れるものだと感心しながら鑑賞した。
上映後の舞台挨拶では、一緒に登壇した友達3人と親しく話をしていたが、映画の中では今回の体験で得た真実を吐露している。自分は孤独だ、そして誰も彼も孤独なんだ、孤独だから繋がりを求める。しかしそう簡単に繋がりなんか得られるはずはない。都会は孤独の集まりだ。
青柳監督の本音が全部詰まっていて、この作品を発表するのは世間に向けて自分の本音をさらけ出すことになる。とても勇気が要ることだったと思う。しかし、闇を抱えた青柳監督をその闇ごと受け入れる友達がいるのは、とても幸福なことだ。拍手。
今後も Uber Eats を続けるという監督。何の保障もない個人事業主。しかし監督には感謝の気持がある。これからも丁寧な挨拶を心掛けて、お店の可愛い女の子から優しい言葉をかけてもらえるように、心からお祈り申し上げる。身体に気をつけてください。
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