劇場公開日 2021年7月10日

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「コロナのある世界線を描いた、数少ない優良インディーズ映画」東京自転車節 東鳩さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0コロナのある世界線を描いた、数少ない優良インディーズ映画

2021年12月23日
PCから投稿

コロナ禍において多くの映画人が「こんな時だからこそ何か映画を作らなきゃ」と創作意欲を刺激されたと思うんですが、そういう謳い文句のインディーズ映画のほとんどが駄作だと思っています

まずコロナが無い世界線の話を描いてる映画はすべて駄作と言い切れます
元々考えていた企画や脚本を文化庁の補助金を得ることで制作できるようになっただけで、コロナ禍が物語には一切反映されてません
物語中で登場人物がいちいちマスクや感染対策していたら話が成立しないのは分かりますが、だったら今、わざわざ作る存在意義がどこにも有りません
コロナ禍を引き合いに出して熱意や意欲をアピールするほど、こちらは白けてしまいます
この類いの映画はインディーズでも”商業映画”だと言い切って欲しいです
商売だったら、こっちも何も文句は言いません

そして、リモートという表現技法を使った映画
これもすべて駄作です
技術的に目新しく映るだけで、技術があるだけの映画を映画とは呼びたくありません
そんなもの、どんな映画にだってその時の目新しい技術は何かしらありますから
それに元々リモートはあったし、なんなら「サーチ」という傑作がコロナより前にもうあったので、それよりさらに面白くないと存在価値がありません
画面越しにやりとりさせていればコロナ禍に作った映画の意味がある、わけはないです
そこにメッセージが無いし、リアルに会話させた方が圧倒的に面白いんですから

そんな中で今作の、コロナ禍でUber Eatsで働く監督自身を題材にしたドキュメンタリー映画
コロナのある世界線で、今作る存在意義があって、リモートという技法の目新しさには一切頼ってない、前提条件はすべてクリアしていて完璧です
非常に興味深く拝見しました
2021年のみならずコロナ禍を代表するインディーズ映画と言って良いでしょう

ただ、ドキュメンタリー映画にも関わらず、演出過多(デリヘルの下りは特に)というか、編集で時系列(自転車のパンク前後)を作為的いじったというか、物語を盛り上げる上でマイナス情報になるUber Eats料金体系(クエスト?は最初からありますよね)の一部を意図的に隠したというか、その辺がドキュメンタリー映画作法としてあるまじき部分が見て取れたので、この点数にしました
ドキュメンタリー映画じゃ無くてモキュメンタリー映画なのかもしれませんが、クリエイターがご都合でドキュメンタリーやモキュメンタリーを行き来して楽をしていたのなら最低です
もっと点数を下げます

監督本来の人間性を存じませんが、社会制度や政治が悪いせいで、本人は真面目に頑張ってるのに何故か貧乏、な方が良かったと思います
現在だと、監督がそこそこなダメ人間に見えるので、まぁコイツじゃこうなるのは必然だな、としか思えませんでした
監督がキャラを演じている訳ではないならば、他の貧困層の若者を主役に立てて、その人に監督が密着する形のほうが良かったですね

東鳩