劇場公開日 2023年3月17日

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「傍観者としての仮面ライダーと感嘆符としてのキャラクター」シン・仮面ライダー 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0傍観者としての仮面ライダーと感嘆符としてのキャラクター

2023年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2023年。庵野秀明監督。世界の浄化を謀る組織ショッカーは、その一環として動物と昆虫のいいとこどりした人造人間を作り出している。気づいたら人造人間になっていた男が、組織を裏切る研究者とその娘に巻き込まれて、、、という話。
ゴジラ、ウルトラマンときて、仮面ライダー。不条理や孤独から抜け出すための極端な思想をもつショッカーと、それを阻止しようとする人々。原作にある程度忠実だが、よく考えてみると、善と悪の対立ではなく、よかれと思う同じ発想から別の筋道をたどって戦う家族という展開はエヴァンゲリオンに通じているが、仮面ライダー本人は家族の話に巻き込まれているだけというところに、ワンクッションの隔たりがある。仮面ライダー自身の物語が薄いので傍観者に見える。
しかし、「隔たり」こそが狙いであろう。ライダーと研究者の娘との間に明示的な形での愛情表現がなかったり、男同士の友情の芽生えも感情に任せてというわけではなかったり、わかりやすい復讐の展開にならなかったり。こうした物語の微温的な展開と、家族の物語に傍観者的に介入する仮面ライダーの姿は、ともに、世界とぴったり一致していると感じられない、現実が嘘っぽく感じられる、という近代以降の人間の宿命を描いているということなのだろう。
「おやおや」「あれあれ」などの感嘆符でキャラクターを描き分けるのは上手だが、しぐさや動きをとらえる映像はとても見てはいられないレベルだと言わざるをえない。

文字読み