「人体改造と変身のメカニズムを語るシーンでは、専門用語を羅列するセリフが多くて、なんだか言っていることがよく理解できませんでした。」シン・仮面ライダー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
人体改造と変身のメカニズムを語るシーンでは、専門用語を羅列するセリフが多くて、なんだか言っていることがよく理解できませんでした。
「50年前にテレビ番組から受けた多大な恩恵を、50年後に映画作品という形で少しでも恩返しをしたいという想いから本企画を始めました。」という庵野秀明の「シン」を冠した新作は、悪の組織によって改造人間にされながらも正義のために戦うヒーロー「仮面ライダー」の姿を、約50年の時を経てリブートしたものになりました。
石ノ森章太郎が原作の「仮面ライダー」は、お茶の間の子供たちを熱狂させた勧善懲悪な楽しさをメインとしたTV放送版のイメージが強いものと思います。
けれども原作コミックでは、対象年齢をTV向けの子供の視聴者よりも高く設定されていました。シリアスな描写を軸に、人間が人間でなくなる恐怖や、改造人間として戦うライダーの悲哀なども包み隠さず描かれているのです。
本作は、この原作コミックの要素を取り入れて、大人でも楽しめる作品を目指したのだと思います。
特徴的なのは、仮面ライダーとショッカーの戦闘シーン。仮面ライダーかなり残酷に戦闘員を踏み潰し、生々しい血しぶきを上げさせるのです。それもドアップで。この時点で、お子様向けの仮面ライダー映画とは一線を画していました。
また本作では、悪の組織「SHOCKER」の全貌が掘り下げられています。何と彼らの目的は、人類の幸福を目指すことにあったのです。しかし彼らの考えは、額面通りではありませんでした。彼らの目指すこととは、最も深い絶望を抱えた人間を救済することにありました。その手段として、強制的な人体改造にあったのです。その犠牲者の一人として、誕生したのが、仮面ライダーこと本郷猛だったのです。彼はショッカーによって身体にオーグメンテーションを施されて桁外れの跳躍力と腕力を持つバッタオーグとなったのでした。
ところで、このオーグメンテーションをはじめとする人体改造と変身のメカニズムを語るシーンでは、専門用語を羅列するセリフが多くて、なんだか言っていることがよく理解できなかったのです。素早いカット割りと組み合わさることで、どんどん置いて行かれる感じがしました。
但し早いカット割りは、戦闘シーンではスピーディーさを生み、テレビ版よりも遙かにリアルティーを感じさせるバトルシーンとなりました。特に必殺技であるライダーキックを放つシーンでは、放つ高さを強調。青空がライダーの色に映えて、格好良かったです。
仮面ライダーとなる本郷に関しては強さと優しさを兼ね備え、トラウマも抱えた悩めるヒーローとして、従来よりも人間くささを感じさせる点で、池松壮亮が似合っていました。
ちなみに、合同記者会見で庵野は自身の中で藤岡弘が演じる本郷猛のイメージが強すぎて、異なる方向性を目指さなければならない時に池松がマッチしたと語っています。
また仮面ライダー2号となる一文字隼人も、ジャーナリストという孤高さを持ち、決して誰にもなびかないことが信条でした。けれども彼なりの正義感で、次第に本郷と行動を共にするように変わっていく変化を、柄本佑が好演していました。
さらに緑川ルリ子役の浜辺美波はとてもミステリアスで、可愛かったです。