「懐かしくも新しいピングドラムの空気。」劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM 前編 君の列車は生存戦略 ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
懐かしくも新しいピングドラムの空気。
テレビシリーズがとても印象に残っていたんだけど、中途半端な視聴で終わってしまったのがずっと気になってて、映画化を機に観賞。
テレビシリーズの物語がひとつの円環になっていたと思うんだけど、劇場版は今度はその円環の外側から物語を紡ごうとしているのかしら。幼い冠葉や晶馬くん、ももかちゃんの位置付けが前編観ただけじゃまだわからない…。
印象に残ったところ箇条書き。
・幾原監督による実写映像とアニメーションキャラクターの融合映像が美しくて、かつ何故か郷愁も感じてとても好きなのだけど(「さらざんまい」のED映像が好きすぎてリピートしまくった人間)、本作でも取り入れられてて思わず見入った。水族館や東京の街が素敵。
・日常の中の裂け目から突如として現れる異空間が好きなので、高倉兄弟があの図書館の隙間に入り込むシーンや裏図書館みたいな空間にときめいた。
・苹果ちゃん、自分のことで周りが見えてない感じが個人的にテレビシリーズの時もそんなに好きになれなかったんだよな…。
・イマジナリー空間での演出色々、既視感あるなと思ったら「あ、これ割と最近さらざんまいでも見たやつだ」という構図。実際はピングドラムが先だけど。
・観ながらストーリー思い出してきた。そう、95年の地下鉄サリン事件の加害者家族と被害者遺族(どっちも当時幼い子ども)という、本人たちにはどうしようもないところで運命を背負わされてしまった子たちの物語なのよね…。
・劇場音響で聴くやくしまるえつこさんの歌声と「ノルニル」は心がたぎる…!
ピングドラムという作品は日常コミカルパートとシュールギャグパートも結構入るんだけど、全体の手触りは何だか哀しくて、冬の宵闇の空気(これから本格的な夜に向けてしんしんと冷えていく感じ)を想起させるんだよな。私はこの作品のそういう空気というか手触りが好きだな、と劇場版を観て改めて思った。