劇場公開日 2021年6月12日

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「観客を現実から解き放つ、B級度数の高い酒」アフリカン・カンフー・ナチス ニコさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5観客を現実から解き放つ、B級度数の高い酒

2021年7月6日
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鑑賞方法:映画館

 スタイン監督が酔っ払って2時間で脚本を書き上げたという本作。確かにこの、モラルの壁をなぎ倒す勢いは、気持ちよく酔った時の解放感に似ている。
 冒頭から神妙な語り口でシュールな設定を叩き込まれる。予告などで多少は知っていたものの、気圧されて「お、おう……」となってしまう。登場人物の字幕は薄めの関西弁である。なんでやねん。(←ガーナの民族アカン族の言語アカン語からの発想だそうです)

 ヒトラーと東條英機が、逃亡先のガーナで「血染めの党旗」の魔力とカラテスキルを使い現地の人を「ガーナアーリア人」として洗脳する。彼らにカンフー道場を潰され、恋人も奪われた青年アデーが、修行して強くなり彼らを倒す。ディテールはともかく、ストーリーはオーソドックスだ。
 一番まともな見どころは、ガーナ人俳優の俊敏なアクションだ(カンフーや空手としてちゃんとしているということではありません)。現地のアクションスターを揃えたらしい。B級映画のユルい空気感で油断していたところに、ん?なんかこの動きはすごくないか?と気付くとちょっと見方が変わる。
 ところどころに仕込まれたカンフー映画へのオマージュも、監督のワクワク感が伝わってきて楽しい。
 「ガーナのジョージ・ルーカス」ニンジャマンによるキッチュなVFXも注目ポイントだ。指や首がチョンパされるシーンが出てくるが、貼り絵状態だったりあからさまな粘土細工だったりして、温故知新的な感動を覚えた。

 スタイン監督は日本在住のドイツ人で、母方はロシア人、父方の祖父は元ドイツ軍の砲兵。「負の歴史は徹底してバカにしてシンボル性をなくす方がいい、タブー視して隠すと崇拝する人が出てくるから」という思想をインタビューで語っている。一見とんでもなく不謹慎そうなのに笑いをスポイルするような不快感がないのは、この考えが根底にあるからだろうか。知らんけど。

余談↓
 しげる氏による監督インタビュー(作品タイトルと「しげる」とかで検索すると見られます)が情報量多過ぎて抱腹絶倒。
・黒人女性が好きで、アフリカに行くためにどうするか考えた結果作品の制作に至る。
・室内での武道会シーン撮影をブードゥー儀式と誤解され警察沙汰に。
・アドルフの格好で銃を持ち、ドローン撮影していたら警察沙汰に。
・プロデューサーの車が爆発。
・アドンコはガーナで一番人気の蒸留酒で、メーカーは本作のスポンサー。差し入れのアドンコでスタッフは泥酔しながら撮影。
・エンドロールに朝堂院大覚が出ているのは、監督の昔からの友達だから。

ニコ
talismanさんのコメント
2021年7月30日

アドンコで酔っ払って撮影したのかー!酔っ払って書いた脚本なのかー!わかる気がする。

talisman