「ある意味、貴重な作品かもしれない」ナポレオンと私 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
ある意味、貴重な作品かもしれない
こういう映画もたまには悪くない。毒にも薬にもならないが、ほのぼのしていい気分になる。能書きみたいな台詞が多めで、シーンが少なめなのは予算の関係だろう。それでもヒロインの武田梨奈はよく頑張った。喜怒哀楽の表情をわかりやすく演じるのは、この手の作品の王道だ。
スマホゲームの王子キャラクターが現実に登場するためには、スマホゲームらしい古い価値観が必要になる。女性の結婚願望と、結婚だけが幸せではないという意識、仕事はまじめにやって会社の利益を出すことが自己評価につながるという仕事人間的な価値観、二股や不倫は悪いことだという錯覚。そういった、やや古めの価値観が本作品の底流にある。
時代はすでにそういった価値観を昇華させつつあるのだが、スマホゲームにはまだ新しい価値観によって勝ち負けのない世界に対応するだけのスキームがないのだろう。というか、スマホゲームのほとんどが勝ち負けによって最終評価が決定されるのであれば、時代はもはやスマホゲームを淘汰しつつあるといっても過言ではない。
本作品のようなゲームからのファンタジーは、そろそろジャンルとしての終焉を迎えるのだろう。ある意味、貴重な作品かもしれない。時間つぶしには有用だった。
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