「月が綺麗ですね。」メイド・イン・ヘヴン 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
月が綺麗ですね。
漱石(この映画の漱石ではなく、明治のほうの)の、「月が綺麗ですね」のエピソードを引き合いに出したいがために作られた映画って感じ。とても丁寧に作られているけれど、現実世界ともう一つの世界が並行して進行していくなか、もう行きつく終着点は見えてしまっていた。それを心地よく観賞するも良し。ただ、自分にはこのオールドスタイルが凡長に思えてしまった。罪深な過去を悔やむセンチメンタルな話なのかと想像してたが、案外軽かった。ちょっと暑さが続いた夏の昼下がりにまどろんで、うつらうつらと見た夢の中のような、でも寝汗はかいていた、そんなふわっとした話だった。
初日なので、舞台挨拶あり。
監督、手塚理美、国広富之のお三方。インテリ役の多い国広の、素のままのチャーミングさにめちゃくちゃ好感が持てた。舞台の二人を見ていて、「ああ、そうだこの二人は『ふぞろいの林檎たち』の共演者か。たぶん"同志"の感覚で撮影に臨んでいたのかなあ」とも思って、なぜだかちょっと胸が苦しくなった。おそらく、かつて『ふぞろい』を見ていた時の感情が、少し湧いて出てきたのかもしれない。
コメントする