「変わり者だからこそ」ミッチェル家とマシンの反乱 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
変わり者だからこそ
時々思わぬ会社が快作アニメーションを発表する事がある。
実は意外とアニメ映画を製作しているものの、『モンスター・ホテル』ぐらいしか印象が無かったソニーピクチャーズ・アニメーション。
2018年の『スパイダーマン:スパイダーバース』がアカデミー長編アニメ賞を受賞するほど大ハッスル!
それに続く、快作!
ミッチェル家。
自然大好きな父、リック。
家族のまとめ役の母、リンダ。
映画大好きの長女、ケイティ。
恐竜大好きの弟、アーロン。
個性的な家族。…いや、ズバリ言うと、変わり者ヘンテコ家族。
飼い犬のモンチも変わってる。犬? ブタ? 食パン?
一応家族は仲良し。でも最近、父と娘の関係が微妙…。
少々ウザい不器用アナログパパと、デジタルにどっぷりハマる現代っこの娘。あるある。昔はあんなに仲良しだったのに…。
ケイティは自身の夢であった映画学校への入学が決まっていた。と同時にそれは、暫く父親と離れて暮らしたいからでもあった。
娘と暫く離れ離れになる。そこで飛行機を勝手にキャンセルし(オイオイ…(^^;)、家族皆で車で送り届ける横断旅に出掛ける事に。
勿論それは珍道中。この旅の間で、父娘の絆は取り戻せる事が出来るのか…?
…と、これだけならファミリー・ロードムービー。
わざわざアニメーションでやるほど?…と思うほど物足りない。
ご安心下さい、履いてますよ。(←何を…?)
その頃とんでもない事態が起きようとしていた…。
とあるIT企業のCEOが画期的なシステムを発表。
今まで使ってたスマホ“パル”から、ロボット“パル・マックス”。
これには人々、色めき立つ。
しかしその発表会で、パル・マックスが突然反乱。
その指令を出したのは、いとも簡単に捨てられたパル。
世界中の人間たちを一人残らず捕まえる。
…が、まだ捕まってない人間たちがいた。
ミッチェル家。
変わり者家族が世界を救う事が出来るか…!?
父娘の関係修復というスモールサイズの“危機”とマシンの反乱から世界を救うというビッグサイズの“危機”が同時に展開。
家族とロボット。全く相反する題材が見事に“合体”。
テンポ良し、笑い(YouTubeの猿)、アクションの迫力、スリリングさ、ハートフルに感動(お守り)…。
映画に必要な要素がほとんどってくらい詰め込まれ、いやはや面白かった!
変わり者だけど、ごく平凡な家族の奮闘。何だか見てたら、我が日本の『クレヨンしんちゃん』を彷彿し、妙に親近感を感じた。
スーパーヒーローじゃないけど、家族の大活躍活劇はディズニー/ピクサーの『Mr.インクレティブル』を彷彿。
こういう“ファミリー物”が好きなら、ドストライク!
アナログとデジタル。どっちがいい悪いじゃない。お互い歩み寄る。その辺の描き方も絶妙。
デジタル社会への皮肉もチクリ。確かにパソコンやスマホって今や生活にないと不便。言い換えれば、相棒、家族、もう一人の自分自身のようなもの。でも時に、汚い手で触れたり、使い過ぎたり、新型が出たりするとすぐ買い換えたり、粗くなったりする。その時、マシンはどう思っているのか…?
『モンスター・ホテル』や『スパイダーマン:スパイダーバース』ぐらい…と前述したが、そういやこれまでのソニーピクチャーズ・アニメーションだって『サーフズ・アップ』もオスカーノミネートされた事あったし、『くもりときどきミートボール』も(1作目の方だけど)なかなか面白かった。
プロデュースはフィル・ロード&クリストファー・ミラーの名コンビ。
高クオリティーな訳だ。
監督マイク・リアンダのユニークで才気ある演出も上々で、その名を覚えておいていいかも。
キャラではモンチと故障した二体のパル・マックス。コイツらがサイコ~。
SFアクションとしても目を見張るビジュアル・センスだが、やはり重点は家族愛。
家族一人一人、時々、イラッ!ウザッ!…と思わせる性格付けが巧い。
家族って、そうじゃない?
ついついあの時は言ってしまったり、すれ違ったり…。
でも、それらを乗り越えて。“理想の家族”なんかよりずっと!
ベタだけど、ヘンテコ家族が温かく伝えてくれる。
だから一層“ファミリー感”を感じる。
最後はこのヘンテコ家族が、サイコー家族になっている。