「コッテコテの人間ドラマが原油とともに盛大に燃え上がる!『海猿』が木から落ちるレベルの圧倒的なディザスタームービー大作」レスキュー よねさんの映画レビュー(感想・評価)
コッテコテの人間ドラマが原油とともに盛大に燃え上がる!『海猿』が木から落ちるレベルの圧倒的なディザスタームービー大作
洋上の石油プラットフォームの火災事故に向かったガオ隊長率いる海難救助隊、ガオ隊長の命がけの活躍で救助に成功するもののヘリのパイロットは死と隣り合わせの任務と重責に耐えられずに退職、後任としてやってきたのは繊細な操縦テクニックを持つ女性パイロットのユーリン。人命救助のために自ら窮地に飛び込むガオと規律に忠実で冷静沈着なユーリンは着任早々からぶつかり合うが、容赦なく襲いかかる海難事故の任務に当たる中で何物にも代えがたい信頼関係を築いていく。
というツカミだけだと伝わりませんが本作、とんでもない傑作です。事前にチェックしてなかったんですけど本作の監督はダンテ・ラム。『ブラッド・ウェポン』や『激戦 ハート・オブ・ファイト』といったバカみたいに分厚い人間ドラマをアクション映画に持ち込んでこれでもかとエモーショナルに盛り上げる作家性を持つ人物。なんせ冒頭に『海猿』4本分のクライマックスに相当するくらいのド派手な火災事故を単なるドラマのイントロとして起用。そこからは本作ではガオと一人息子との親子愛、海難救助隊員達の熱い友情、ユーリンのツンデレといったサイドストーリーをドカンドカンと載せコッテコテのコメディとしてドリフみたいな効果音も躊躇なく使用して味付け。ダンテ・ラムはサントラに往年の名曲をよく使いますが今回はベン・E・キングのアレを使うので何となくホノボノとした雰囲気も漂わせます。そうやって用意周到に熟成されたドラマに向こう10年分の邦画大作が余裕で作れるレベルの海難事故をぶつけてきます。この辺りのスペクタクルはもし半世紀前に本作が作られていたら映画史が変わっているレベル。なんせ製作費約90億円とか120億円とかなのでそりゃもう一つ一つの救護シーンで一本映画が作れるくらい潤沢に資金がかけられていてそこはもう幼少期にパニック映画を浴びるように観てきた世代の心臓を鷲掴みにしてグリグリ捩ってきます。今の小学生が観たら私にとっての『タワーリング・インフェルノ』を軽く凌ぐトラウマを与えること必至です。そんな大惨事のミルフィーユで盛大に燃え上がるのが前述の人間ドラマ群、ダンテ・ラム節が炸裂してこれでもかと泣かされます。中国映画はこれやから油断出来へんのです。お腹いっぱいです。