劇場公開日 2023年1月20日

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「3.6) 過去を惜しむ原題、未来に向けた邦題」エンドロールのつづき tsukaregumaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.03.6) 過去を惜しむ原題、未来に向けた邦題

2023年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

てっきりノスタルジックな感涙モノと舐めていた。
いつのまにかアート映画の文法に変わり、思わぬ射程の広がりに驚く。映画がもっと好きになる映画だ。

"Last Film Show"
”エンドロールのつづき”
過去を惜しむ原題と未来に向けた邦題。
この両方が相応しい━それがまさに本作の素晴らしさだ。フィルム映画や母の手料理を愛でる旧き良き時間。だがそこに留まればカースト制度や家長制といった因習から逃れることはできない。誰よりも息子を愛しているのに、暴力で罰を与えることでしか、それを表現出来なかった父親の無念。サマイの両親は息子を育てる「言葉」を持ち合わせていなかったのだ。アメ(食事)とムチ(暴力)が、残念ながら彼らが出来る全て。

そこから旅立つために捨てなければいけないものもある。そんなトレードオフに本作は映画の歴史を重ねる。時代が変われば映画も変わる。だが魂は受け継がれるのだよ、と。捨てられた映写機とフィルムの行く末を、驚くほどフェティッシュに映したあの時間は、ある意味「映画の臨終」に立ち会い、その死に誠実に向き合っていたように思えた。

「もう映画は死ぬ」
某映画雑誌(廃刊済)編集長のニヒルを気取ったこんなツイートに心底腹がたったのを思い出した。それに比べて本作はなんと愛のある夢のある着地だろう。

今、世界で一番勢いがあるインド映画から、こんな内省的な作品が現れたのが驚きだが、「少年のジュブナイル」から「映画の歴史」にまでその射程を伸ばしたアート性が素晴らしい。

過去と未来は等価。
『ニューシネマパラダイス』というよりも『大人は判ってくれない』。
そしてたぶん『フェイブルマンズ』。

tsukareguma