「のんが描く等身大の青春ファンタジー」Ribbon ken1さんの映画レビュー(感想・評価)
のんが描く等身大の青春ファンタジー
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正直言って、それほど期待していなかったのだけど、彼女の持つ不思議なバイタリティと、絶対的な存在感に惹かれて劇場に足を運んだ。作品はもちろん未熟なところがたくさんあったけれど、観て良かった。処女作でよくこれだけの映画が作れたものだと驚いてしまった。
のんは、コロナ禍という未知のパンデミックの中で、自分が感じていること、思っていること、興味があること、好きなこと、嫌いなことなど、まさに等身大で表現する。けれど、重々しい雰囲気は一切ない。中盤は思わず吹き出すようなコミカルなシーン満載で今を生きる若者たちの日常を描く。
でも、心の中では、アートへの探求が止まらない。それが苦しい。美しくも物悲しいファンタジックな映像は、タイトルである「リボン」を巧みに使いながら、ラストシーンへと我々を誘う。
オープニング、身体中にまとったリボンを引きずりながら「重い」というセリフ。それがどこに繋がっていくのか。僕はきっと内面との対峙なのだろうと思っていた。けれど主人公の気持ちは、外へと向かっていく。重さとなっていた全てのリボンが身体から抜け出し、作品へと昇華する。
「ゴミじゃない」というラストシーンのセリフは、コロナで全てを諦めざるを得なかった、同世代の若者たちへのエールだ。風に舞うリボンは、まさにその気持ちの表れだ。
「あなたは一人じゃない。あなたを見ている人が必ずいる。あなたの努力は無駄なんかじゃない。」伝えたいことがしっかり表現できているじゃないか。ああ、やはりのんは只者じゃなかった。次世代を担うアーティストなんだ。
このレビューは、これからの活躍に期待を込めた僕から監督へのエールにしたい。
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