「シュールで倒錯した世界観に入り込めるかどうか」真夜中乙女戦争 藤崎修次さんの映画レビュー(感想・評価)
シュールで倒錯した世界観に入り込めるかどうか
私個人はあまり入り込めなかった。
物語は主演の永瀬廉の語りで進行していくのだが、どんなに哲学的なセリフを吐いても深みが無いし、説得力が無い。
率直に言えば、声がガキっぽい。ジャニタレだからという偏見を抜きにしても、どうにも軽い。
池田エライザは美人だし、ハーフ独特のアンニュイな雰囲気もあって若手女優の中でも一番魅力的な人だと思っているけど、
歌の実力は正直、微妙。劇中でも昨年始めた歌手活動のプロモーションのようなリサイタル(?)シーンがあるが、物語の腰を折ってしまった感があった。
ただ、そんな中にあって柄本佑の演技力は圧巻。この人は愚鈍な役から本作のような掴みどころのない妖怪のような役までしっかり演じ分けることが出来、しかもどんな役でも存在感を残す。本作でも役柄上、背を向けてるシーンが多かったがその誘引力がハンパなかった。
ストーリーに関して言えば、グループに集まった人々が次第に先鋭化していく様をもう少し時間を割いて丁寧に描いたほうが良かったのかな。普通の人々に内在する狂気の部分をしっかり描けば、物語全体の印象も随分変わっていたかも。
本作では東京のシンボルアイコンとして東京タワーを中心に描いているが、個人的にもスカイツリーが出来た今でも東京を代表するスポットは東京タワーだと思っている。下町の何も無いところに屹立している無機質なただの電波塔のスカイツリーに対して、都心のビル群の中にあって、さらに小高い丘の上から街全体を見下ろすようなかたちでそびえ立つその姿は、柔らかな暖色系の躯体も相まって不思議と街の風景に安定感をもたらしている。
コメントする