「人はまわりの人に救われていく」そして僕は途方に暮れる mayuoct14さんの映画レビュー(感想・評価)
人はまわりの人に救われていく
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他人の好意を踏みつけにして自堕落に生きていた主人公が、これではいけないのではないかと気づき、その気づきから自分を取り戻そうとして恋人に向き合おうとした瞬間に裏切られ、ちょっとした因果応報を味わう話。
でも、そのことが主人公を少し吹っ切れた気持ちにさせ、ひとつ前へ進みかけるのでは、と言う示唆で終わる。
(この、示唆のある藤ヶ谷の振り向き様の表情が秀逸。)
全体的に「人間の持っている嫌な部分」=嘘をついたり、ちゃんと向き合おうとしなかったり、適当にしておいたりするずるさだったり…そんな「ちゃんとしてない」主人公が綴る物語で「なんだかなあ」と観ている側は思うのだが、主人公の周りは憎めない奴として温かく接する。
でも、そこに付随している小さな揉め事やトラブルでその場に居られず、主人公はそこから逃げてまた次の場所を探す。
このままだと大分やばいな…と思わせてからの、本人の悩みもがき、何か「よくない」と思った感情が、父親との再会をきっかけにクライマックスで爆発する。そこが一番の見応え。
藤ヶ谷太輔、見た目が好きなだけだったが、この渾身の演技で一気に株が上がった。
豊川悦司のまとう雰囲気もなかなかだったが(ラストレターでのやさぐれた父親役を思い出した)、今回はこの藤ヶ谷演じる裕一の造形に心を奪われ、涙が流れた。
苦い思いを経て、途方に暮れても、人に救われて、人はまた生きていくものなのだ。そういう優しさの余韻をを胸に抱いて映画館を後にした。いい映画だった。
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