「自分で選ぶ道」マークスマン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
自分で選ぶ道
アメリカとの国境に近いメキシコの町。
叔父のヘマで麻薬カルテルに命を狙われる母子。
追っ手に母親は殺され、息絶える直前、息子を託す。シカゴの親戚の元に送り届けて。
放っておく事出来ず、送り届けるは、勿論この男!
イーストウッド!…じゃなかった、リーアム・ニーソン!
アメリカとメキシコの国境間、広大な土地、荒野、極悪一味、男と少年、決死の逃避行…。THE現代版西部劇。イーストウッドが主演でもいいくらい。
それもその筈。監督はロバート・ローレンツ。イーストウッド監督作を多くプロデュース。イーストウッド主演の『人生の特等席』で監督デビュー。イーストウッドから映画作りを学んだ愛弟子。
細かく見れば相違はあるが、でもほとんど『クライ・マッチョ』。
いや、これは語弊。公開はこちらが先。『クライ・マッチョ』を見た時、まんま『マークスマン』やん!
いや、また違った。『クライ・マッチョ』は30年前以上からあった企画。
ひょっとしたらローレンツはイーストウッドから『クライ・マッチョ』の企画を聞き、自分なりの同作として作ったのかもしれない。
実際、劇中にイーストウッド映画が。1968年作『奴らを高く吊るせ!』。
全編にローレンツからイーストウッドへ、オマージュとリスペクト。
そんなローレンツがイーストウッドな主人公に抜擢したのが、リーアム。
元狙撃兵というお馴染みの設定で、麻薬カルテルどもを一掃…ではない。
妻を亡くし、生きる意味を見出だせないジム。
借金で自宅も競売にかけられ、崖っぷち。
そんな時に…。
当初は国境警備任せ。が、追っ手が迫ってきている事、少年ミゲルはメキシコへ送還される事、あの時見逃してくれていれば母を殺されなかったというミゲルの言葉…。
これが正しい道なのかは分からない。法を犯しているし、無謀な行動。
それでも自分を信じた正しいと思った道。全てを失った自分に何が出来るか。
男の生きざま。
いつものように迫り来る敵を迎え撃つ超人オヤジではない。
逃げるが優先。時には隠れたり。
カルテルのリーダーが極悪非道。ジムの家に火を放ったり、何の関わりもないのにジムらが寄ったというだけでコンビニの若い女性店員を脅したり。
もしミゲルが捕まったら、子供とは言え容赦しないだろう。だから何としてでも送り届けなければ。
当初はソリが合わない二人。が、旅を続ける内に…言わずもがな。
モーテルでイーストウッド映画を見ながら歳の差の恋バナなんてほのぼのユーモラス。
二人の関係を取り持つジムの賢犬。ここも『クライ・マッチョ』的。
リーアムが活躍するバリバリのアクションを期待するとちょっと物足りないかもしれない。テンポもスロー。
ドラマ重視のアクション映画。そう見れば見応えあり。
勿論、リーアムのアクションは皆無という訳ではない。元狙撃兵の設定を活かしたクライマックスの狙撃アクション。ここはやはり見せ場! にしても、狙撃で敵車をひっくり返すリーアムさん、さすがッス…!
敵リーダーとガチンコ拳で決着。
ミゲルの親戚がいい人で温かく迎え入れてくれて良かった。
それを見届けたジム。深手を負った。が、この道で良かったんだ。
そこにローレンツが歩んで行こうとする道が見えた。イーストウッド継承という道を。