劇場公開日 2022年10月21日

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「AIに教えられる「人間とは?」」アフター・ヤン つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0AIに教えられる「人間とは?」

2025年5月7日
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鑑賞方法:VOD

この作品は人工知能の物語だ。人はAIに対して何をさせるかだけを考える。スイッチを入れれば動く家電のように。逆に言えば何かをさせようとしなければ動いていないものと考えてしまう。
しかしもちろん、ヤンのようなAIは何も命令されていなくとも何かを考え行動している。人はそのことに気付けない、考えないだけで。

ヤンは人間になりたかっていたのか?というセリフがある。人間のエゴが全開になったセリフといえよう。
それに対してアンドロイドは鼻で笑う。
どうしてAIが人間になりたがると考えるのか?。過去の映画作品などは確かにそうだった。人間らしい「心」を手に入れれば人間になりたがるものだと。
この点が本作が過去作と一線を画するところだ。

ではAIは何をしていたのか。自身がAIであると自覚しながら人間と同じように振る舞い感じていたのだ。
今を大事にし、過去を後悔し、愛し、一瞬の幸せを噛み締めた。
主人公たち家族がヤンを愛したように、ヤンもまた家族の一員としてAIのまま愛していた。
翻って、人間の幸せとは何だ?という問いかけになっているところが興味深い。

内容とは直接関係ないけれど、ヤンの修理費を捻出するためにインスタントのお茶を試すシーンが面白い。きっとすごく美味しくなかったのだろう。
簡単なお茶を求めるのも人間なら美味しいお茶を求めるのもまた人間。人はそれぞれ違うということだし、AIもまた違った考えを持っているはずなのだ。

ヤンの過去の一瞬を見ることの多い作品で、癒されるような不思議な感覚に陥る作品だ。
ミステリーでもあり、ヤンの一生を振り返るドキュメンタリーのようでもある。
究極のお茶を求める男のドキュメンタリーがどんなものか分からないけれど、少なくともジェイクは、お茶の男にもヤンにも、生きた人間の姿を見たことだろう。それはこの作品を観ている私にも同じことがいえる。

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つとみ