アフター・ヤン

劇場公開日:

アフター・ヤン

解説

「コロンバス」のコゴナダが監督・脚本を手がけ、アレクサンダー・ワインスタインの短編小説「Saying Goodbye to Yang」を独創的な映像表現で映画化したSFドラマ。

人型ロボットが一般家庭にまで普及した近未来。茶葉の販売店を営むジェイクと妻カイラ、幼い養女ミカは慎ましくも幸せな毎日を過ごしていたが、ロボットのヤンが故障で動かなくなり、ヤンを兄のように慕っていたミカは落ち込んでしまう。ジェイクは修理の方法を模索する中で、ヤンの体内に毎日数秒間の動画を撮影できる装置が組み込まれていることに気付く。そこには家族に向けられたヤンの温かいまなざしと、ヤンが巡り合った謎の若い女性の姿が記録されていた。

コリン・ファレルが主演を務め、「ウィズアウト・リモース」のジョディ・ターナー=スミス、ドラマ「アンブレラ・アカデミー」のジャスティン・H・ミンが共演。「コロンバス」で主演を務めたヘイリー・ルー・リチャードソンが物語の鍵を握る謎の女性を演じる。

2022年製作/96分/G/アメリカ
原題:After Yang
配給:キノフィルムズ

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第74回 カンヌ国際映画祭(2021年)

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ある視点部門
出品作品 コゴナダ
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映画レビュー

3.0辛辣なSFか、センチメンタルなメロドラマか。

2022年10月31日
PCから投稿
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村山章

4.0水や空気や光のように沁み込んでいく

2022年10月30日
PCから投稿

驚くべきことに、コゴナダと名乗るこの監督はたった2作の長編で唯一無二の作風を確立させてしまった。そこには穏やかでなだらかな空気が流れているものの、だかといって何もないわけではない。彼が敬愛する小津作品でちゃぶ台を捉えるカメラの高さまで緻密に計算されていたように、本作もまた、降り注ぐ光や人の動き、建築物の構造に至るまで、全てに意味があるように思える。メインの家族があのような人種構成になっているのにもきっと何かしら理由が付随するはず。その家族肖像の一角にAIの存在があり、それはよく見かけるダークSFのように暴走などすることなく、むしろ誰よりも深い内面世界を垣間見せてくれる。この映画の心地よさの根底には、こういった未来絵図やストーリーのナチュラルな構築と積み重ねがあり、我々は本作を理解するのではなく、ただそのままに浴びて、胸いっぱいに吸い込む。まるで大切な家族や友人のような未来がそこにはあった。

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牛津厚信

4.5西洋と東洋。哲学と詩情と映画。多様な要素の幸福な融合

2022年10月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

幸せ

“静謐”と評されることの多い、全編を貫く穏やかな様式美が心地よい。それは、すぐ隣にいる人から話しかけられるような、普通の会話とささやきの中間くらいの声量による台詞の発声や、スタイリッシュな建築のインテリアや庭を背景に人物を配する精妙にコントロールされた構図、映像に寄り添う劇中歌やBGMが醸し出す情感の組み合わせによって生み出されている。

そうした様式美はすでに、モダニズム建築の宝庫であるインディアナ州コロンバスを舞台に、韓国系建築学者の息子と図書館勤務の高卒女性(「アフター・ヤン」でもキーパーソンを演じるヘイリー・ルー・リチャードソン)の邂逅と再生を描いたコゴナダ監督の長編デビュー作「コロンバス」でほぼ確立されていた。タイプは少々異なるが、“映像詩”と称されるテレンス・マリック監督の諸作に近い、一貫したスタイルを感じさせる。

小津安二郎を敬愛し、小津監督との共同脚本を多数手がけた脚本家・野田高梧(のだ こうご)にちなんだ名を名乗るコゴナダは、韓国生まれの米国育ち、現在はロサンゼルスに暮らす映像作家。劇映画を手がける前は、委託されたビデオエッセイの形式で、小津や是枝裕和、ヒッチコックやキューブリック、ウェス・アンダーソンといった名匠たちの作品の分析と批評を行っていた。そうしたキャリアからも、映像スタイルと作家性にきわめて意識的であることがうかがえる。

湯の中を茶葉が浮遊するガラス容器の中と、AIヒューマノイド・ヤンのメモリに残されていた記憶の断片が整然と浮かぶ仮想空間のアナロジーが意味するのは何だろう。私たちが“世界”と“自己”を認識するのは記憶の蓄積によってであり、さらに言えば長い歴史の中で蓄積されてきた集合知によって、世界と自分は認識されている。そんな思索が込められているのだと、私は解釈した。

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高森 郁哉

3.5ハーモニー

2023年4月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ジャケット写真で柔らかに微笑む家族。
父のジェイク(コリン・ファレル)
ジェイクの妻で肌色の黒いカイラ。
そして養子のミカは中国人。
ミカの育児ロボットのヤン(ジャスティン・H・ミン)
その4人が木立の緑の中で、満ち足りた表情で写真に収まっている。

バランスは突然崩れる。
ミカの大好きなヤンが故障したのだ。
かけがえのない兄(ヤン)がこの世からいなくなるかもしれない。
ミカは悲しむ。
しかしヤンの喪失は劇的なドラマとしては描かれない。

イギリス人のコリン・ファレル。
妻役の女優はジャマイカ人。
ヤンは韓国人の容姿。
そしてミカは中国人。

どうしてジェイクとカイラは実子を持たないのか?
持てないのか?
その辺が気になるのは、私が世俗的だから?

コゴナダ監督は韓国系アメリカ人。
テーマ音楽は監督が尊敬する坂本龍一。
そしてコゴナダ監督は小津安二郎の信奉者だと言う

A24が手がけた作品とは思えないほど、穏やかで静謐。
新しい家族の形。
養子だったりAIだったり、
愛したAIが故障して治せなかった時。
家族を失った時と同じ痛みや悲しみを感じる。
そしてヤン。
「私に幸せは分かりません」
そう言っていたが、
ヤンも家族を深く愛していたのが、よく分かる。
遠くない将来、
人間とAIは限りなく《同じ》
そう言う存在に近づくのかも知れない。

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琥珀糖
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