「【希望】」天才ヴァイオリニストと消えた旋律 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【希望】
前に、ある作家さんで大学でも講義を持っている方と、民族差別なんかについて話した時、ヨーロッパで、長い間、迫害され続けてきたユダヤ人に、楽器の演奏を身につけようとした人は結構いて、持ち運びの容易なヴァイオリンを弾ける人は多かったのだそうだ。
教養であることはもちろん、場合によっては演奏家になることも可能だし、それで演奏家になったユダヤ人は少なくはないと。
(以下ネタバレ)
歌にして、口伝でユダヤ人の系譜を語り継ぐってところは、なかなか、日本人も含めて、多くの人には理解しづらいところだと思う。
エジプトを脱出し、イスラエルの地が安住の地になるかと思いきや、そこも奪われ、欧州に散り散りになり、迫害され、支え合ってきたユダヤの人々じゃないと理解し合えないものがあるのだ。
イスラエルの歴史学者でカミングアウトもしているユヴァル・ノア・ハラリのように、「神は、人間の作り出したフィクション」だと言えることが幸せなのかは、僕には判断がつかない。
ただ、神じゃなくて、人間同士が支え合うのが一番だという社会がより良いような気はする。
だから、対比として、ドヴィドルのヴァイオリン教育に尽力したマーティンの父親の存在は重要だったのではないのか。
民族とか宗教を越える人はいるのだ。
そして、この結末は、多くの困難をくぐり抜けては来たが、まだ、真の融和には時間はかかりそうだと示唆しているようにも思える。
だが、否定的なわけではなく、少しでも歩み寄ってきていると、きっと言いたいのだ。
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