劇場公開日 2021年9月23日

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「いわゆる"巻き込まれ型映画"プラスαの味わい」クーリエ 最高機密の運び屋 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0いわゆる"巻き込まれ型映画"プラスαの味わい

2021年9月30日
PCから投稿

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東西冷戦時代、ソ連の機密情報を西側にリークする見返りに亡命を希望する情報提供者に接触を試みたのは、商売で頻繁に東欧諸国に出入りするイギリス人セールスマンだった!?このトンデモなミッションを発案したMI6とCIAは、プロのスパイを一般人に仕立てるよりも、一般人にスパイをやらせた方が、より自然に見えると踏んだのだ。これ、スパイ映画としてかなり捻ったストーリーのように感じるが、ナント実話の映画化なのだそう。この分野にはまだまだ掘り起こされてない鉱脈が眠っていそうである。

その結果、まかり間違えば即、捕らえられて拷問&出国禁止になるかも知れない危険なミッションを、観客は傍観者よりもやや近距離で、主人公と一緒に体験することになる。そのスリルとサスペンス、そして少しのユーモアは、何も知らされていない人物が訪れる危機をスレスレで回避していく、いわゆる"巻き込まれ型映画"独特の味わい。最大の見せ場は、対極的な立場にあるセールスマンと情報提供者の間に芽生える友情と、その行方。演じるベネディクト・カンバーバッチと旧ソ連・グルジア(現ジョージア)出身のオレグ・ペンコフスキーが醸し出すケミストリーが、過去に起きた事実を身近なところまでグッと引き寄せてくれる。

歴史の裏には必ず人間のドラマがある。それを再認識させる上出来の実録スパイ映画だ。

清藤秀人