「【脱線王】史上最高のファースト・レディ」クーリエ 最高機密の運び屋 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
【脱線王】史上最高のファースト・レディ
感想文のタイトルが、いきなり映画から脱線してるんですがw
「キューバ危機」と言うと、記憶に残る最も衝撃的な人物は、ケネディ大統領夫人であるジャクリーンなんです。高高度偵察機U-2のキューバへの偵察飛行で、準中距離弾道ミサイル1基、中距離弾道ミサイル3基の存在が確認された後、ホワイトハウスは、後にエクスコムと呼ばれることになる国家安全保障会議執行委員会を立ち上げ対応の協議を開始します。しかしながら、結論を得るには至らず、協議は紛糾。最悪の事態をも覚悟した警護担当のクリント・ヒルは、大統領夫人であるジャクリーンに状況を打ち明け、その時が来たらホワイトハウス内の核シェルターへの退避の説明をしようとした、その夜。ヒルの言葉を制して、ジャクリーンは毅然として言い放ったとされています。
「核シェルターへの避難を求められた時、私が取る行動について、あなたに知らせておきます。私はキャロラインとジョンJr.の手を取り南庭に出ます。兵士の様に、そこに立ち、全てのアメリカ人と同じ運命に立ち向かいます。」
いや、あなた立場考えて下さいよぉ。って言いたくなりますけどね。鳥肌もんですし、ファースト・レディの決意たるや。歴代の大統領は、この言葉を噛みしめて欲しい。
映画の話に戻りますと。
物語の主役は、運び屋のグレビル・ワインですが、歴史を変えた仕事をしたのは、GRU大佐オレグ・ペンコフスキーであり、核戦争の回避に、彼が提供した情報も寄与しているのは間違いありません。
◆アナルディ作戦
1962年のソ連・キューバの軍事協定後、キューバには秘密裡に大量の物資と要員が運び込まれます(アナルディ作戦)が、アメリカは「まさか核兵器が持ち込まれているはずはない」と捉えていました。実際には、60発の弾道ミサイル、42機の爆撃機が搬入済み。ただし、この時点では肝心の「核弾頭」はミサイルに装着されておらず、ミサイル基地にも搬入されていませんでした。
多数の貨物船の出入りを不審に思ったアメリカは、偵察機を飛ばし続けますが、CIAは、制裁を受けているキューバへの支援物資と言う結論付けを繰り返します。
この段階で、キューバに核ミサイルの配備計画がある事を確信しているものは、CIAの中にはいませんでした。ただ一人、長官であるマコーンだけは、その疑いを持っており、そこに「キューバにおける諜報活動で得られた情報」が届きます。サンクリストバル一帯に、ただならぬ質量物が搬入された情報を受け、U-2偵察機による偵察飛行を実施。
ペコンフスキーが提供した見取り図・仕様書に記載されている寸法・質量、と、キューバからの情報、偵察飛行による写真を突き合わせて分析を行い、CIAは「アメリカ本土を攻撃可能な弾道ミサイルがすでに配備済みである」と結論付けます。
映画では、ペコンフスキーがミサイル基地の位置がわかる地図を入手したと描写されていましたが、場所の情報はキューバ国内の諜報活動で得たものと見られている、と言うのが史実です。無論、そこにミサイルがあるという推測は、情報解析の結果であり、ペコンフスキーからの技術仕様の情報が無ければ、アメリカ本土に届くミサイルの配備の有無は分かりませんでした。
◆フルシチョフの本音を読む
キューバ危機は、最終的にフルシチョフが譲歩したと認識しています。「キューバにソ連のミサイルがあり、それは、アメリカ本土を攻撃可能な飛距離を有したものである」と言う事実に対して、当時、すでにソ連を直接核攻撃可能なICBMを有していたアメリカが、キューバに対して過激な制裁を即発動しなかったのは、ExCOM(国家安全保障会議執行委員会)におけるリュウェリン・E・トンプソン(当時国務省のソ連問題担当顧問)の発言と提言があったからです。「フルシチョフに交渉の機会を与えるべき」。ペコンフスキーなどのソ連から収集した情報を分析していた彼らは、「フルシチョフは何らかの取引を目的にミサイルを配備した」と考えていたからです。
この提言が無ければ、一気に空爆と侵攻に傾き、少なくともソ連領内からトルコ・西欧のアメリカ軍核ミサイル基地への攻撃は、不可避だったでしょうから。
1962年10月28日、ワシントンD.C.のソ連大使館は、ケネディが開戦を決意したとの誤報をクレムリンに発しますが、フルシチョフはミサイルの撤去を発表しました。冷静になり譲歩したんです。
キューバ危機の教訓は、その後のアメリカの外交戦略に活きています。
常に、じゃないけど。
結局、脱線したままになったけど、十分に長文になったので終わりです。
映画は、とってもリアルで、怖くて、満足の行くクオリティでした。
良かった。
同ジャンルの過去作と比較しても、上位に入るレベルだったと思います。
毎度のことながら、この方面(地政学的な分析から末端の兵士の銃器、時にはテロリストの持ってる武器も)の解説は、blood trailさんのレビューがあれば、パンフレット不要ですね。ありがたいことです。
うわぁ!
奇しくも、bloodtrailさんとまったく同じ日にジャクリーンの同じトピック思い出していましたぁ!
但し、私が観たのは本作ではなく007「消されたライセンス」(笑)
今、脚を痛めて1人でシアターに行けないのですが、bloodtrailさんのレビューで非常に観たくなりました。なるべく早めに鑑賞してきますね〜。
絶対、共感間違いないので先にポチッとさせて下さいね♪