ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語のレビュー・感想・評価
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ウケは悪いだろうけど、出来はいい
イスラム教、キリスト教、ユダヤ教なんかはもともと同じだったわけだから、同じ神話があることは当然だけど、あまりそんなことは考えないから、ちょっとした驚きがあった。
例えば、私たち日本の多くが「モーセ」と認識している人物の呼び名はたくさんある。そんな差異を見るのが楽しかった。
なんとなくこんな話になるのではないかと、つまり、信仰についての物語になるだろうと想像していたので、幾人かのレビュアーさんが書いているような忌避感はない。むしろ、そこを楽しめなくて何を見るんだというくらい。
まあざっくりと、作中で語られた奇跡と、本作の物語が最後の奇跡なわけで、つまり、ずっと奇跡の話だけをしていたわけだ。
脚色はされていると冒頭に出るけれど、この出来はサウジアラビア王太子も満足したのではないかと思う。
イスラム伝承の合作アニメ
東映アニメーションとサウジアラビアの会社との合作。
メッカ侵攻への防衛戦をメインストーリーしたアクション映画で、間に3つのイスラム説話が挿入される。説話部分はスライドショーで画風も異なる。
作中で描かれるメッカ侵攻は象を従えた軍団によるもので、コーランにも描かれる紀元前570年ごろ、ビザンツ帝国支配下のエチオピア軍の侵攻と思われる。この時のメッカの指導者は預言者ムハンマドの祖父で、ムハンマド誕生の前日譚ともとれる。
挿入される説話は、ノアの箱舟(旧約聖書)、出エジプト(旧約聖書)、円柱都市イラム(コーラン)。信仰の重要性が解かれ、それぞれ奇跡が起きる。
防衛戦のパートは今どきのアクションで、選抜された戦士による決闘や、集団戦のパートは今どきのアクションになっている。説話の挿入で物語が分断されたり、市民軍の練度が心配になるが、静野監督らしい派手な空撮やアクションも入る。
歴史上、侵攻軍は天然痘の流行で撤退したと言われるが、本作では神の奇跡が大きな役割を果たす。
全体に説話部分の主張が強く、市民軍の戦術が薄いこともあって物語の駆動力が弱く感じるが、イスラームの世界観を感じる作品としては良いのではないか。サウジアラビアでの教育用コンテンツとしても機能しそうである。
敵の将軍アブラハの悪悪しい感じは素敵。イラムの巨人族のデザインがファンタジーSFっぽいのも楽しい。
鑑賞後に湧いてくる様々な考え
アラビア出身の友人の勧めで見に行った。見てよかったと思う。映画はアラブの重要な伝承を描いているらしい。ヤマトタケルが何者なのかを他国の人が知る由もないのと同じで、日本生まれの自分にはこの作品の歴史的な背景が分からない。だが、そういう気づきを与えてくれるだけでも価値があった。この物語を文字で読んだら興味を抱くきっかけが得られなかっただろうが、アニメのおかげでかの地の人々の情念に触れられたように感じる。
映画は、象の軍隊を率いるアブラハという軍師と、アブラハに襲撃されたメッカ市民との攻防を描いている。アブラハを検索すると6世紀に実在した人物で、この物語の舞台がイスラム教のはじまる直前だとわかる。だとするとメッカの民が土地の象徴として守ろうとしているカアバ神殿とは何なのか?メッカの人々が自分たちを鼓舞するために旧約聖書の逸話を語るシーンからすると、当時のカアバ神殿ではユダヤの民が信じたと同じ絶対神を奉っていたのだろうか?であればムハンマドの登場によってそれまでの信仰がどう更新されたのか?悪役のアブラハは無神論者のように描かれているが、インターネット上にはクリスチャンであったという解説もある。では絶対神を信じる者同士がなぜ戦ったのか?現代社会に巨大な影響を及ぼしている預言者の伝統文化を自分は何も知らないということを痛感する。
民族の危機に際して神の御業を待望する感情は、神風の思想で多くの若者の命を失った日本国民にとっては思い出したくないものだ。この映画にはそういう感情のうねりが強くある。それは日本では明らかに敬遠される類のものだが、それを避けたら物語の軸がなくなってしまう。敵の奴隷にされるか、それとも神あるいは超越的な何かを信じて命がけで戦うか、そういう心情で生きている人々が今も世界各地にいる。見たくないものは見ないというのでは平和主義は成立しないだろう。映画を見終えて、自分の環境についてそう考えた。
文字どおり「説教臭い」
説教臭いところを除けば東映の男臭いアニメ全開で割と面白かった。まあ、説教臭いも何も、言葉の本来の意味で正しく説教のための映画なので当たり前なんだけど。
劇中、宗教的な奇跡の挿話が3つ描かれるのだけど、ヌーフ(=ノア)、ムーサ(=モーセ)のエピソードについては、イスラムがアブラハムの宗教であることが分かりやすい反面、イスラムの成り立ちや、そもそも宗教に疎い日本人にとっては、「あれ、それってキリスト教の話じゃないの?」という混乱を与えそうだなと思った。
主役の青年アウスは古谷徹が声を当ててるんだけど、脇を務める神谷浩史、中村悠一、中井和哉といった若手中堅の実力派を食う勢いで、この人は化け物かと驚嘆した。古谷徹に引っ掛けて言うなら「連邦のモビルスーツは化け物か!」みたいな。なんであんな若々しい声が今も出せるんだ。。
なお、上映が終わって客席を振り返ると、ムスリムの家族がいた。この映画を届けたい相手であろうその家族は、果たして満足してくれただろうか。
アラブ世界を知る上でとても面白かった。声優も素晴らしかった
初日の午後3時、新宿バルト9で観賞。
アラビア半島の神話世界のお話で、イスラム教の聖地メッカを護るもの達と、それを巨大な象のいる軍隊で攻め滅ぼそうとするもの達との戦いを描いた作品。
宗教的なバックボーンがなければアクション映画に、教育的な宗教要素を加えた作品に見えるかもしれませんが、私はとても深い意味を感じました。特にイスラム教における旧約聖書の大切さというのは知らなかったし、彼らの信仰のよりどころにアラビア半島を超え、出エジプト記の時代まで遡る歴史的背景があったことに驚かせられました。
ノアの方舟の話や、イランの物語、紅海が割れるシーンなどはとても美しく描かれており、重要な神の奇跡の御業のシーンがまとめれ見れたのは大変ありがたかったですね。
イスラムの世界の教育要素としても制作しているということですが、それもよく理解できました。
声優さんも古谷徹さんを始め三石琴乃、神谷浩史さんなどスーパー豪華な役者さんで占められていて、この世界観をよく表現していたと思います。
圧巻は最後の戦いのシーンですね。ここは、私はとてもよかった。みていただくしかないのですが、とても感動的なラストシーンになっています。 神とは?信じるとは?民族とは?ということをとても深く考えさせられました。
私の評価は8.5ですが、ここにはかけなかったので、8としました。
日本人にもアラブ世界の価値観を知ってもらう意味で観てもらいたいですね。
これで良いのか…?
内容的にはまぁ、いわゆる「宗教アニメ」な感じなんですけども。
向こうの国の子供たちへの教育アニメだとしても、こんな構成で良いのだろうか…
アニメーションは素晴らしいですよ。さすがです。
声優さんもまぁ…うん、まぁ、良いですわ。
脚本・構成って大事だなぁと思いました。
あと、BGMが『犬夜叉』過ぎてちょっと面白かった。殺生丸さま出てくるかと思ったわwww
映画らしく重厚感もあるしいいんだけど、聞き覚えがある音楽が使われてるとフフッてなっちゃう。
エンドロールで和田さんのお名前確認して納得。
『ブッダ』観た時と同じ感覚。
「宗教モノ」って、どうしても引いて観てしまうのは、信仰心がないからかな〜
追記
英語苦手な私としては、英語の字幕がずっとついて回るのもちょっとストレスでした…
字幕は各国で付けてくれ…
詰め込み過ぎがもたらした弊害
サウジアラビアが、自国の宗教的理念を子供達に分かりやすく伝える目的で製作されたアニメとの事だが、そのために途中で挿入されるノアの箱舟やモーゼの軌跡といった説話解説がクドく、ストーリー本筋のテンポを欠いてしまっている。
演出も『300』や『ロード・オブ・ザ・リング』っぽいシーンがあるなど、既視感バリバリ。これだったらキャッチコピーは、「日本人よ、これがごった煮多国籍アニメーションだ」に変えるべき。
良かったのは声優陣が豪華すぎる事ぐらい。主人公役の古谷徹は本当に声が衰える事なく若々しい。その妻役に三石琴乃を配したのは、やっぱり東映アニメーションが『セーラームーン』を制作した名残か?あと神谷浩史の役どころが、『〇撃の巨人』の〇ヴァイそのまんますぎて笑った。
宗教がらみついでに言えば、共同制作した東映アニメーションは以前、手塚治虫の『ブッダ』もテンポ悪く劇場アニメ化した前科があった。
教育的要素を伴うという大前提があるにしろ、もう少し構成をブラッシュアップしてほしかったところ。
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