「すれ違う価値観」プロミシング・ヤング・ウーマン 哲也さんの映画レビュー(感想・評価)
すれ違う価値観
大前提。この物語で罰せられる登場人物がした行為に弁解の余地は全くない。
その上で…
罪は罰せられなければならない/罪は償わなければならない、なんとなくこの考え方の間には微妙な距離がある。欧米は必罰主義みたいなものが根底にあるような気がする。もちろん正しい。でも、東洋というか日本には、もう少し許容範囲がある。
主な登場人物たちは、考え方・価値観を共有することが出来ない。主人公、主人公の親、大学時代の教師・同級生、偶然出会った同級生の彼氏、死んだ親友の母親…
同一の価値観を共有することなど、もちろん現実社会でもないけれど、登場人物たちの価値観の違いは比較的大きい。
主人公は、従来の間違った価値観やそれに従って誤った行動をする人たちに対して、自分なりの異議申し立てをしている。それは暗い側面もある。
でも、大学時代の同級生の彼氏や死んだ親友の母親によって、従来の(それは間違っていない)価値観に依った平穏な幸福な生活を見つけた(ような気がした?)。
が、自分が復讐したつもりだった大学時代の同級生がもたらした情報によって、それは崩れ去り、また前の自分に戻ってしまう…。自分は正しいと思っていた「復讐」が、自分に(ある意味)禍いをもたらしてしまった。日本には「知らぬが仏」なんていう言葉もあるけど…^^;
でも主人公はそれで良かったのかな?真実を知り、自分の考えに従って行動できたのだから、本望なのかも知れない。
最後、元カレへのメールにLOVEのメッセージがあったのは、皮肉も感じたけど、ちょっとグッと来た。やっぱり好きだったんだろうな…。でも傍観者であった彼のことも、やはり許すことは出来なかった。
あの主人公を殺してしまった悪い奴。裁判になれば減刑されると思うなぁ。あんなやり方迫り方されたら、相当な恐怖を感じるだろうから…
価値観がすれ違う重層的なストーリーにして、面白いエンタテインメントだった。