「尾野真千子の人生に混乱しながら信念を持っている強さの美を魅せられた」茜色に焼かれる りょんりょんさんの映画レビュー(感想・評価)
尾野真千子の人生に混乱しながら信念を持っている強さの美を魅せられた
冒頭にあった例の池袋の事故を彷彿させるシーンから、最後の茜色の夕焼けのシーンまで一気に吸い込まれるように魅入ってしまった。
尾野真千子演じる田中良子がずっと抱える外に吐き出せない闇を徐々にいろいろな人間関係の模様から、ようやく怒りや苦しみ喜びを吐き出していく。ある意味、最初の方は死にながらゾンビのように生きているような尾野真千子が徐々に感情を外に表現していくことによって『生きている』という形が見えてくる
なぜこんなにつらいの生きているのかという永瀬正敏の問いに尾野真千子は笑うしかなかったけど、苦しくて不幸ばかり訪れるような状況だからこそ生きるという意味を考えさせられ深く味わえてくる。
茜色の夕日が美しく息子と心を通わせた瞬間、見ている側もようやく心を震わせられて、感動してしまう。束の間の美しさかもしれないが、それはとても感動的だった。
内容は不幸と屈辱の連続で辛くなってくるけど、所々クスっと笑えるところもありつつ、また同級生を尾野真千子が包丁で刺そうとして、同級生、大塚ヒロタさんが必死に転がり逃げまどうシーンは唯一、非現実的でコントのような場面でもあり、痛快さもあって救われるシーンでもあった。
最後の雌豹も笑
苦しみの中に笑いというのはやっぱりすごく重要だと思わされる
出てくる男たちはみんなズルい奴らがとても多かったが、みんな大人だけど小学3年生くらいの男の子と思えばなんとなく納得できる。男性が本当の意味で大人になるというのは、すごくハードルが高いことなのかもしれないと思わざるおえなかった。
息子くん、和田庵くんも今後ちゃんとした大人として成長してくれることを願う。信念をしっかりと持ったお母さんの背中を見ているから大丈夫と思うけど。
それにしても嶋田久作さんの話聞いています?あなたの7年前の事故に興味はないという会話をしているシーンの圧倒的な存在感と嫌なやつっぷり感は飛び抜けてた。
みんなそれぞれとても不幸な状況に陥れてくれる男たちの分かりやすい振る舞いが苦しさを生み出していたけどクズっぷり満載を凝縮してみれてよかった。そして尾野真千子の女優っぷりがなんといっても素晴らしかった作品です。