「希望でもなく絶望でもない茜色の空」茜色に焼かれる グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
希望でもなく絶望でもない茜色の空
人に勧めたくなる映画にも一応私なりの判断があります。
①まぁ、それなりに映画好きな友達になら
②マーベルとかディズニーとかリーガルものとか割と嗜好がハッキリしてるあいつになら
③映画好きかどうかに関わらず、多少煙たがれることがあっても、とにかく見てほしい、知って欲しい、感じて欲しい、と勧めてしまう
この映画は間違いなく③でした。
コロナ禍であらためて浮き彫りになっている諸課題への問題提起は言うまでもありません。
多くの方が述べられている通りです。
それよりも私が斬新だと思ったのは、
夜の闇に向かいつつある〝茜色に染まる夕方〟がまだまだ続くんだね、しょうがない、まぁ頑張ろう。
というメッセージです。
いや、そんなメッセージ発してるつもりはないけど、と監督は言うかもしれませんが。
明けない夜は無い。
という言い方はよく聞きますが、宵闇がそこに迫ってるようにしか見えないけれど、空が茜色のうちは転倒しない程度にはペダルを漕ぎ続けてみようよ。
こんなまったりした励ましがなんだかとても新鮮でした。
もうひとつ、今までと角度の違うアプローチだと思ったのは、〝自分探しの罠〟についてです。
今の自分は本当の自分では無い、これは俺のやりたいことでは無い、こんなはずではなかった…
どんな状況に対しても、自分本来の姿ではないことにして、抱えている鬱屈を説明したり、納得させてしまうことがありますが、いつも〝今の自分〟を演じているのであって表面の部分は芝居なのだ。そして、芝居を演じているのは紛れもなく自分であり、その自分に本来の自分とか偽りの自分などという違いなんてない。それでいいじゃないか。
コロナ禍だからこその要素に目を奪われがちになりますが、生きることについてのリアルな視点が、じんわりと深く胸に突き刺さってくる素晴らしい作品だと思います。
オダギリジョーさん。
『湯を沸かすほどの熱い愛』でもダメ夫でしたが、
この作品でも決して誉められた人物ではありません。
それでも、奥様が惚れてしまったんだから仕方がないという設定が無理なく伝わってくる独特の雰囲気は健在です。
永瀬正敏さん。
裏社会に通じる一種のプロ。
風俗嬢個々の人生に立ち入るようなお節介はしないけれど、素人のルール違反と大切な商品(彼女たち)を守る仕事はキチンとする。
皆さん、本当にいい仕事をしてますね。
グレシャムさん、コメントありがとうありがとうございます。
本当に強いのは女性なんですよね、やっぱり。
そんな芯の強い女性が「まぁ、頑張りましょ」と言う、この「まぁ」が奥深い気がしました。
誰よりも頑張っている人の口から、無理しない程度に頑張れと言われているみたいで…
決して「私のように頑張れ」と言っているわけではないところが余裕というか、恐れ入りました。
私もズルい男の一角ですから。
コメントありがとうございます!
なんか作品を観ての直接的なことより、自分は…と書く方が良いかな考えてしまいましたw
私は所謂ふつ〜うなサラリーマンですが、永瀬正敏さんの役処が1番おいしく感じるタイプなんですw
美紅さん、ありがとうございます。
映画の中では、やっぱり明るい〝希望〟を見たいというデフォルトな潜在意識がありますが、この映画は極力、リアルに存在する困窮やいたたまれなさから逃げないことを柱としているように感じました。みんながみんな100%絶望的な訳ではないけれど、かと言って楽観的に希望を抱けるような人も極めて少ないのだと思います。だからこその茜色なのだと私は受け止めました。