「尾野真千子が全て」茜色に焼かれる 映画鑑賞1000作さんの映画レビュー(感想・評価)
尾野真千子が全て
コロナ禍べースでのリアリティ感ある話に、国民の殆どが腹に入らなかった例の上流階級高齢者の暴走事故要素を入れ、様々な屈辱に耐えた上で決して解消されない結末を迎える、実にアウトローな映画だった。
コロナにより社会的弱者に陥った主人公家族と、元々が弱者だった者達の絡み合い、さらに社会モラル的にアウツな面々も交じり合い、そこには希望の光は無く、現コロナ禍での我々の感情面も入り込み、実にリアルな感覚で観られた。風俗店の客層の実に腐り切ったとこ。コネ被害でのパート切りと嫌がらせ。誤魔化し笑いする軟弱な担任。金で体を要求する性欲にまみれた知り合い。最低最悪なヒモ男。近親レイプの父親。遊び感覚浮気希望で気持ち悪く笑う元同級生.......数えきれない程の屈辱と嫌悪に、主要人物達は苛立つ程までに我慢する。殆どの事が淡々と流れ解消されない。本当、アウトロー、アンダーグラウンドなストーリー。
唯一の救いは、息子が天才である事。ただそれだけ。この約束の無い未来感は、今のコロナ禍故の気持ちと同じ。主人公のがんばろうねの言葉が虚しい。これも今の我々の気持ちと同じ。監督は、ただ皆こうだよね、俺もそうなんだよの気持ちを映画にしただけにも感じる。そう捉えると、この落とし所の無い本作を良い映画だと言い放つのはどうかと感じるが。
私が高得点に上げたのは、尾野真千子の凄まじい程の体当たり演技。これが全て。なかなかの汚れシーンも、少しイッチャッテる感あるセリフと表情も、ちょっと程度の低い考え方も、貧乏揺すり連発も、彼女の今までの女優人生をぶっ壊す程。彼女は試写会の挨拶?で泣いたらしいが、そりゃそうだろ、と。
この映画、尾野真千子が全てだ。