「環境破壊によって人類の住むことが出来なくなった地上。 代わりの場所...」JUNK HEAD りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
環境破壊によって人類の住むことが出来なくなった地上。 代わりの場所...
環境破壊によって人類の住むことが出来なくなった地上。
代わりの場所とされたのが地下だった。
ただし人類自ら開発を進めることは困難であり、そこで生み出されたのが人工生命体マリガン。
地下開発の途中でマリガンは独自の変異を繰り返し、地下世界はマリガンに乗っ取られてしまう。
一方、人類は遺伝子操作により永遠ともいえる生命を得たが、その代償として、生殖能力を失ってしまう。
滅亡の危機に瀕した人類が選んだのは、マリガンの生殖能力の調査。
危険な地下調査員に志願したのは、「ぼく」だった・・・
といったところから始まる物語で、「ぼく」はロボットのような地下服に身を包み、地中深くに探検に入るが、事故により頭部を残して身体のすべてを失ってしまう。
残された頭部は、地下第一層で暮らすマリガンの博士により再生され・・・と続くわけだが、非常に壮大な物語であることが感じられる。
まず第一に感じたのは、「おぉ、これって、フィリップ・K・ディック的なんじゃないの?」ということ。
主人公は、事故により身体の大半を失うが、それとともに記憶も失くしてしまう。
記憶というよりも、自己のアイデンティティを喪失するわけで、「自分は何者?」というディック的主題が持ち込まれている。
主人公の「ぼく」は、一度ならず何度も身体を失い、記憶を喪失するのだが、その都度、ロボティクスにより再生される・・・
「あ、これは、もしかしたら、人類は生殖能力だけでなく、肉体も失くしてしまった、という設定なのでは?」との疑念も湧くが、そこいらあたりは明らかにされない。
中盤では、記憶もアイデンティティも失った「ぼく」は、職工のマリガンによって食料調達のおつかいに出されることになるが、ここいらあたりは少々コント臭が漂う。
まぁ「はじめてのおつかい」というのは冒険であるけれど、まぬけ映画のネタとしては定番ともいうことができ、「こんな壮大な物語に、こんな下らないエピソードを挿入するなんて・・・ なんて、すばらしいんだ!」と感じました。
終盤になると、遂にマリガンの生殖の謎に迫るのですが、そこには「知恵の実と生命の実」の神話が持ち込まれて、「おぉ、これはギルガメッシュ!」と感嘆したとたん・・・
えぇぇ、ここで終わっちゃうの? 物語としては、序破急の「序」ぐらいのところ。
クリエイターの堀貴秀によると「三部作を構想」とのこと。
こんな手間暇がかかったストップモーションアニメを三部作でつくろうと思うとは!
とにかく、造形が素晴らしい。
アニメとしての動きも緩急が効いているし、カット割りも絶妙。
その上、セリフまで架空言語。
って、どこまでマニアックなんだ。
キャラクター的には、黒ずくめの三人衆が、香港映画のノリで、なんだか楽しくなっちゃいます。
続きも是非観たいです。