劇場公開日 2021年8月27日

「小説の映画化は難しい」鳩の撃退法 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0 小説の映画化は難しい

2025年9月30日
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鑑賞方法:映画館

カワイイ

一言で言えば原作のダイジェストって感じだなあ。原作がかなり長い上にちょっとミステリー仕立てだから仕方ないんだが、大幅にカットできるところが少ないんで、どうしてもものすごいスピードで話を消化していくことになってしまう。そのため原作の面白味でもある語り口の“貯め”や人物造形の深みや細やかな描写が無くなってしまい、ひたすら原作の大まかな話の筋を追いかけるだけの映画になってしまっている。

映画を観る直前に原作を読み終えたから、どうしても原作と比べて「あー、あのエピソードはカットされたか」「ここはこう変えたのか」「あの人、出てこないんだ」とか、そういうのばかり考えてしまった。ま、好きな小説(やマンガ)の映画化(やドラマ化やアニメ化)では、よくある話で、しょうがないんだけど。もっと昔に読んだとか、読んだけど内容を忘れたとか、読んだけど面白くなかったとかなら話は別なんだろうけれども(まあ原作が面白くなかったら映画も観ないか)。逆に原作未読だったら、原作と比べてどうこうなんて関係ねえし!と思っちゃうのもまた事実でもある。

ちなみに原作のストーリーは、ある地方都市で起こった偽札事件と平凡な一家の失踪事件に関わることになってしまった元直木賞作家で今はしがないデリヘル嬢の送迎ドライバーの主人公が、自身が見聞した事実をベースとしながらそこに脚色や推測や想像や創作を加え、自分自身以外はすべて仮名にして“過去に実際にあった事実”ではなく“過去にあり得た事実”を小説として描いていくという、佐藤正午らしい複雑な構造と仕掛けに満ちた小説である。

バラージ