「鳩が豆鉄砲を食らったような気持ち」鳩の撃退法 eigazukiさんの映画レビュー(感想・評価)
鳩が豆鉄砲を食らったような気持ち
駄作ではないが良作でもない。原作ものの邦画の中では役者の演技力もあり、健闘しているように思えたが、まず主人公の背景や状況が全くわからない状態が続いていく。やっとなんとなく理解してきたところで場面説明を意図したような描写が現れる。行き過ぎた表現を避けようという意図があるのであれば、それは最後まで初志貫徹されるべきだったのではないか。その場面をもってしてもこの映画のテーマ、目的がはっきりとしない。私たちが明らかになって驚くべき謎は何なのだろう?私たちは何を見せられているんだろう?この描写は描く必要性があったのか?など終始疑問符がつきない。そして、音楽や場面転換などからクライマックスの盛り上がりを迎えているのだろうが、こちらの気持ちが追い付いていない。フェスのステージで1人盛り上がるボーカルについていけていない観客の困惑に似た感情を抱きながらスクリーンを見つめる。怒涛の種明かしの末に私が得たものは何なのだろうか。そこで感じたことは、ああ、そこが言いたかったんだ。え、でもそれだけ?というのが正確なところだと思う。
説明が不十分かもしれないから、、と差し込まれたような描写によってすっかり興ざめし、逆に客観的にこの映画を見てみようというふうに思えたのは逆の意味で功を奏していたと言えるのかもしれない。この映画の鑑賞後の「気持ち良くなり損ねた感」は何とも言い難い。沸き立つような感動や伏線をもう一度確認するために再度映画館に足を運ぼう、というような感情は沸かず、まあわからなくてもいいかな、という程度に記憶に残り、他の作品によって上書き保存で容易に消えていくような印象しか残らなかった。画面や演技は良かったのだとすれば、構成や説明の仕方、誘導の仕方によってはかなり良い映画になっていたのかもしれないという「惜しい映画」というのが正直な感想である。原作はさぞ面白い作品なのだろう。原作に触れるきっかけにはなると思う。
ただ観客まで撃退していては映画を作る所詮がないとは思いませんか。