劇場公開日 2021年6月4日

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「最初から最後まで笑いを鏤めた快作」カムバック・トゥ・ハリウッド!! 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0最初から最後まで笑いを鏤めた快作

2021年6月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 オスカー俳優の3人が本気でバカをやった痛快作である。映画館の前で神父と修道女がプラカードを掲げて抗議デモをしているシーンからはじまるのだが、いったいどんな映画に抗議しているのか、気になる。
 その後は予告編の通り、ロバート・デ・ニーロ演じる映画プロデューサーのマックス・バーバーがモーガン・フリーマン演じる裏社会の金貸しのレジーに金を返すために新作の撮影と偽って、トミー・リー・ジョーンズ演じる往年のスターであるデューク・モンタナを主演及び保険金殺人のターゲットとして撮影中に死んでもらおうとする。しかしデュークはしぶとくてなかなか死なない。
 マックスの間抜けぶりに拍車をかけるのがタレント馬のバターヒップ(みたいな名前だった気がする)である。この賢くて勇敢でちょっぴり意地悪な馬のおかげで、映画後半のドタバタが成り立っている。ベタなギャグが何故かとても笑えるのだ。馬の後ろで呉々も「ルバーブ」と言わないように気をつけよう。
 デューク・モンタナが西部劇の俳優としてのポテンシャルを大いに発揮して、稀代の曲馬(くせうま)であるバターヒップを手懐けたり、恐るべき幸運に何度も何度も恵まれるのも、甚だ愉快だ。人類がコロナに打ち勝った証みたいな妄言を吐いているどこぞの総理大臣よりも、コロナ禍にあって人類を豪快に笑い飛ばす本作品のほうがよっぽど価値がある。
 コメディ映画ファンなら必見の作品で、本編を観終わっても迂闊に席を立ってはいけない。エンドロールの途中でマックスの映画製作会社が製作した作品が流れる。それが冒頭の神父と修道女の抗議デモの種明かしになるのも面白い。それにセクシーで強欲なシスターという貴重な動画が観られる。最初から最後まで笑いを鏤めた快作である。

耶馬英彦