「キャスト、スケール、ゴージャスなエンタメ性…アジアン探偵アベンジャーズ!」唐人街探偵 東京MISSION 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
キャスト、スケール、ゴージャスなエンタメ性…アジアン探偵アベンジャーズ!
中国人探偵コンビ、日本人探偵、タイ人探偵が、東京を舞台に大暴れ!
ヤクザやチャイニーズ・マフィア、警察、秘密組織まで絡み、ある殺人事件を発端に、推理ミステリー、アクション、コメディ、真相のドラマ…。
中国発一大エンターテイメント大作!
…実は本作、単体作品ではなく、中国では大ヒットを記録している人気シリーズの“第3作目”。
第1作目『THE BEGINNING』は2015年作。タイが舞台。日本未公開。
第2作目『NEW YORK MISSION』は2018年作。NYが舞台。日本では昨秋公開。
そして本作。日本を舞台に人気日本人俳優も多く出演している話題もあってか、昨夏日本で初めて公開。
…という、日本ではちとややこしい事情。
自称探偵のタン。お調子者でおバカな性格。ケンカは強い。
警察学校学生である甥のチン。冷静沈着、天才的な記憶力と推理力を持つ。
これだけで笑えそうな凸凹コンビ。
時に迷コンビ、時に名コンビとして、難事件を解決していく…。
…というのが、基本設定。
本作は開幕数分、チンの過去やおそらく前2作の映像が挿入され、あれれ、やっぱ見てないと?…と一瞬思うが、大丈夫。
基本設定さえ抑えておけば、後は難なくすんなりポンポンポンと、作品世界に入っていける。
東京へやって来たタンとチン。
依頼主は、日本の名探偵、野田。
ちなみにシリーズには世界的推理アプリ“CRIMASTER”というのがあって、それを通じて探偵たちは旧知であったり、ライバルであったり、ランク付けもされている。
チンと野田は前作のラストで知り合ったらしく、“CRIMASTER”では共に2位。自他共に認める“好敵手”。
そんな野田からの依頼とは…
チャイニーズ・マフィアの会長が殺され、容疑者として逮捕されたのはヤクザの組長、渡辺。場所が密室であっただけに、彼しか居ない…。
が、何か裏がある。野田はチン(とタン)の力を借り、殺人容疑を晴らそうとする…。
本格探偵ミステリーというより、推理は少年向け漫画/アニメもしくはゲーム感覚。
タンとチンのコンビは勿論、各キャラとの掛け合いも楽しい。
ジャンルは“ミステリー・コメディ”なだけあって、笑い所は沢山。
ギャグやおバカ度、おふざけ度もかなり。病院のシーンはほぼコント。
お決まりの海外が製作した時のヘンテコ/ステレオタイプ日本描写。まあ、コメディだからご愛敬という事で…。
話題は何と言っても、豪華日本人俳優の共演。
妻夫木聡はシリーズの顔、ワン・バオチャン&リウ・ハオランと共にトリプル主演級。
長澤まさみは実質ヒロイン。
染谷将太、浅野忠信、三浦友和も単なる脇役に留まらず、しっかりとした役所と存在感。
他にも、鈴木保奈美、奥田瑛二、六平直政、酒向芳…。
これだけの面子が揃えば、日本でだって豪華な大作が作れるくらい!
豪華キャストは日本からだけではない。
タイからムエタイ・アクションスター、トニー・ジャー。
キレッキレのアクションは勿論、本作ではコミカルな演技も見せてくれる。(あの日本アニメの某女の子キャラにまさかのコスプレ!)
ラストシーンのみだが、香港の誇る名優がある役柄で登場。これはおそらく、次作への布石。
アジアン・スター勢揃い!
スケールも充分。
スケールはセットにも。渋谷の街やスクランブル交差点は、足利に再現した巨大オープン・セットだというから驚き!
恐るべし、チャイニーズ・マネー…。
“CRIMASTER”第9位のタイ人探偵、ジャックも参戦。
ヤクザ、チャイニーズ・マフィア、警察入り乱れ。
事件の鍵を握るチャイニーズ・マフィア会長の秘書、杏奈。
が、何者かに誘拐されてしまう…。
誘拐したと見られるのは、指名手配中の殺人犯。
そんな中、チンの身に思わぬ事態が…。
謎の組織“Q”の暗躍…。
そもそもの目的は、渡辺の無罪証明。彼の裁判迫る。
一度はばらばらになったかに見えた三国探偵チームだが、実は水面下で、協力し合い証拠を集めていた。
そして、裁判。
渡辺の無罪証明と共に、真犯人を暴き出す!
その真犯人は…!
ここまで来ると、真犯人は薄々察しが付く。
明かされていく関係性、動機…。
悲劇、憎しみ、復讐…。
演者の悲しさと迫真の熱演も相まって、終盤はコメディである事を忘れるくらい胸打たれ、引き込まれた。
探偵モノの真相は、いつだって悲劇が多い。
そう考えると、本作もしっかりと探偵ミステリーのセオリーに乗っ取っている。
実は王道の探偵ものなのだ。
まあ、やり過ぎやツッコミ所は…挙げたらキリがない。
でも、本当に気楽に楽しめ、終盤のドラマでさらにポイント上がった。
事件終わって、皆で見るお盆の花火。
見た人それぞれによって、様々な“ラブ&ピース”が込められている気がした。
個人的に感じたのは…
現実社会では国家間は多くの問題やしがらみを抱え、国民同士も反発感情を抱いている。
だけど本作は、アジアの国々のスターが共演し、和気あいあいと、こんなにも楽しい作品を贈ってくれた。
それって、何て素敵な事なんだ。
当初は本作でシリーズは終了予定だったが、続行。
“Q”の存在やタン&チンの活躍もまた見たい!
次はどうやらロンドン。その国のビッグスターを招くのなら、TVドラマシリーズで風変わりのシャーロック・ホームズを演じてブレイクし、今やMCU作品やオスカーにもノミネートされるアノ売れっ子スターが出演したらスッゲェ~!
でもその前に、前2作も見てみたいなぁ…。