「見ている人はちゃんと見てくれているーー幻と現実の狭間で、心の声と向き合う勇気を描いた、優しくも不思議な物語です。」僕と頭の中の落書きたち りこさんの映画レビュー(感想・評価)
見ている人はちゃんと見てくれているーー幻と現実の狭間で、心の声と向き合う勇気を描いた、優しくも不思議な物語です。
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統合失調症を抱える主人公の物語を、序盤はどこか明るいトーンで描いており、彼が「見て見ぬふり」をしながら日常を過ごす姿がユニークに表現されています。
しかし、同級生のマヤとの恋をきっかけに、物語は徐々に変化していきます。
自分と向き合おうとするほど症状は悪化し、終盤にかけてはホラーのような緊張感を伴う映像表現が増えていきます。
暗い照明や不穏なBGMが、彼の内面の不安や崩壊を見事に視覚化していました。
特に印象的なのは、奇妙で面白い演出の数々です。
まず、彼のカウンセラーは一切画面に登場せず、声の出演すらありません。
まるで観客自身がスクリーン越しに彼の心を見守る「カウンセラー」の立場に置かれているようで、この作品の独特な没入感を生んでいます。
また、彼の症状が現れる際に登場する“幻の人物たち”にはそれぞれ役割があり、彼を苦しめる存在でありながら、同時に支えにもなっているように感じました。
母とその恋人ポールとの関係も見逃せません。
作中で『グッド・ウィル・ハンティング』の名が登場する場面では、「見ている人はちゃんと見ている」というメッセージを強く感じ、心に残りました。
ラストは温かく、希望を感じさせる結末です。
ユニークな演出が多いため好みは分かれるかもしれませんが、今まさに孤独を感じている方には、きっと優しく寄り添ってくれる作品だと思います。
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