「60分に込められた全て」100日間生きたワニ ノーガード侍さんの映画レビュー(感想・評価)
60分に込められた全て
他の方のレビューを確認しましたが、まぁ散々な評価ですね。
また上映開始からまだ一週間ほどにもかかわらず、早朝1日1本上映という状況です。
逆に気になってしまい観てきました。
結論から言ってしまえば、人をかなり選ぶ作品です。
キッズアニメにしか見えないキャラクター達ですが、まずこの作品を子供が理解するのは不可能かと思います。
また20代の方達にも『ストーリーに動きの無い退屈な作品』と一蹴されてしまうかと。
おそらく本当の意味でこの作品を楽しめる最低ラインは30代半ばかと思います。
それはこの作品が持つ
『当たり前の事が突如無くなる』
『平凡な時間こそ実は一番の幸せ』
といった要素に共感出来るか否かが全てだからです。それに気付くには多少の人生経験が必要でしょう。
以下ネタバレです。
全体の構成は
①100日目
②1~99日目
③101日目以降
となります。
【ストーリー】
冒頭に主人公のワニが死ぬシーンから始まります。
その後に100日前として死ぬ前のワニの行動が語られて行きます。
当然ワニは自分が死ぬ運命など知らないので、毎日平凡ながらも楽しい日々を過ごしていきます。
『今度』や『いつか』等の言葉を使い、未来への楽しみや希望を語るシーンも何度かあります。
100日後に待ち受ける運命を知るこちらからすれば、ワニ達が楽しそうにする姿を切ない思いで見守る形となります。
なんだかんだで中心人物となっていたワニが死んだ後ですが、良く集まって遊んでいたネズミ、センパイ、モグラ、イヌは疎遠となっています。
そこに悪名高いカエルが登場します。
空気を読まないカエルがワニの居た場所にことごとく土足で入ってきます。
『ワニの場所を汚す奴』と認識したキャラクター達はカエルから距離を取ろうとします。
『お前邪魔』といったニュアンスのセリフは誰も言いませんが行動から読み取れます。
そこでようやくカエルも察し、今まで一切見せなかった弱さをネズミに見せます。
ただ寂しかっただけのカエルの本質を見たネズミはワニとの思い出の場所に彼を連れていきます。
そこでようやくネズミは心から笑い、心から泣けたのです。
ワニが居なくなり止まっていた時間が、カエルという『異物』を受け入れた事で動き始めて物語は終了します。
【声優】
ワニ役で神木 隆之介さん、ネズミ役で中村 倫也さんが演じています。
ワニもネズミも決して物語の主人公になるタイプでは無く、どこにでも居る『普通』の兄ちゃんです。
その自然体の普通をとても良く演じられてたと思います。
【評価】
当初はボロクソに言ってやろうとネタ目的で観たのですが、結果としてとても心に刺さる作品でした。
なぜこんなにも酷評されているのかが、正直わかりません。
こんな事を言う私は少数派なのでしょうか。
正当に評価して頂きたいですね。