秘密の森の、その向こうのレビュー・感想・評価
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スタイリッシュさとメッセージは分かるものの…退屈を塗り替えない映画
オンライン試写にて。うーん、コンパクトで観やすいとはいえ、そのスタイリッシュさが刺さらなかった。感動作と言うほど引き込まれず、ファンタジーの一編に感じた。
引っ越す家。亡くなった祖母。消えた母。心の隙間を表すように閑散とした部屋が彼女の心を表すよう。そこで出会った同い年の女の子は母と同じ名前。凄くファンタジックであるものの、普遍性を色濃く感じさせるセンス・オブ・ワンダーが特長。少女たちの冒険のようにも感じるし、人生の短さを隠喩しているよう。よく言えば優しい映画だし、悪く言えば退屈を塗り替えない映画だ。
このコンパクトさには緻密な計算と余韻を生むマジックがかかっているのだろうが、『燃ゆる女の肖像』と同様、さり気ないアクセントに気づけなければハマれない。拍車をかける様な展開が少なく、段々と咀嚼していくことで景色が広がっていくため、やはり人を選ぶ印象を受ける。分かりやすいことが正解とは思わないが、回収できなかった部分のわだかまりが残ったまま進んでいくのは何とも歯がゆくなる。
優しい物語ではあると思う。ただ、奥底に眠る部分に触れられるかは分からない。自分のセンスが起因する気がして、ちょっとモヤモヤ。
相似的な
2021年。セリーヌ・シアマ監督。祖母の死で実家を片付けることになり、久しぶりに田舎に帰る家族。しかし、鬱気味の母は片づけを終えずにどこかへ行ってしまった。残された小学生の娘は、隣の森で同年代らしき少女と出会い、彼女の家についていくとそれは実家で、、、という話。森のなかで自分と同年代の母が現れて交流する幻想譚。
日ごろからふさぎがちな母は祖母の死で益々殻に閉じこもってしまう。そんな母が自分と同じ年齢の少女となって表れ、楽しく遊ぶ。本当の母が帰ってきたときには、閉じこもりがちな母の性格は簡単には理解できないまでも、その事実を受け入れ、母との距離は小さくなっている。
少女と母、母と祖母の相似的関係が、二人の少女の相似的外見として表現されている。相似的だがどちらに重点があるかは明らかで、少女としての母ではなく、娘を中心としていた主観ショットがいくつもある。家や森を見る娘の主観ショットには10代の少女の不安や喜びが丁寧に描かれている。
森の中で出会ったのは…
けっこう、まあまあ、良かったです。
僕はネタバレがイヤなので、あらすじを調べずに観る事が多いのですが、
大好きだった祖母が死んで…
森の中で同じ名前の女の子と出会い…
と、おぼろげ、ぼんやり、した情報で観ましたが、
おかげで、どっちだ?何だ?と、混乱しながら観ました。
終わってからポスターを見たら、モヤモヤしてた事が思いっきり書いてあった(笑)
公式のポスターに書いてあるぐらいだから、たぶん知ってから観た方がいいんでしょうね。
個人的には、知らない状態で混乱しながら観て正解だったと思いますが…
ネタバレがイヤな方は、ポスターは見ず、あらすじを調べずに観た方が、いいと思います。
想像力を掻きたてられ、より楽しめるかも?
あと、エンドロールに流れる歌の歌詞に色々と答えがあります。
時間は73分、コンパクトで素晴らしい♪
「原題」の意味を調べてはいけない、という特異な映画…。
今年283本目(合計558本目/今月(2022年9月度)26本目)。
どうしても70分クラスの映画なので、ひねる範囲にも限界があり、かなりわかりにくい展開になること自体は事実です。ただし、登場人物は子供2人(と、取り巻く大人)というわかりやすいもので、余計な人は一切出てこないので「この人誰?」というようなことは起きにくいです。
日本での公開タイトルはこの通り、「秘密の森の、その向こう」ですが、原題は全然違います。そして「原題(フランス語)を機械翻訳などかけるとネタバレになる」というあまり見たことがない類型(換言すれば、日本ではフランス語は義務教育でも高校でも習わない、ということからできること)になります。
原題を翻訳してしまうと「行くまでもなく最初から落ちがわかる」映画になるし、調べないと(元が短いという事情もあって)「そんなのわからないよ…」という「だまし討ち」みたいな論点があって、どうにも評価が難しいです。しかも70分と短いので語るところもないですし…。この「ネタバレ」になる「真の事実」は最後の10分くらいまでしか明かされず(原題を翻訳した人は別)、もとが短いのに「残りの10分でいきなり変なことを言い始める」という、理解を混乱させてくるパターンではあります。「虚言癖」とまでは言わないにせよ「そりゃないだろう」というパターンです。
ただ、フランスの森の中のシーンがきれいだった点、自然に関する描写やフランス文化(フランスでも、すごろく(人生ゲームっぽい)が遊ばれている点など)に触れられている点は評価しました。
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(減点0.3) 結局上記につきる点があり、「70分の準短編ものでは最後までトリックを見抜くのが難しい」「一方で原題を翻訳ないし、仏検なり一定の級(実は準2級の私でもわかるんですよね…。2単語に過ぎないので)を知っていると「あぁなるほどね」になるので、評価が両極端になりやすいのでは…というところです。
ただ結局これは最終最後は「フランス語自体が日本では(学習環境という観点で)メジャーではないのでできるトリック」だともいえるし、他に不愉快にさせる表現(性質上、森にいる動物を虐待するなどetc)は一切存在しないので、引いてもこの程度でしょう。
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森の中で自分の母親と出会う物語。
ある日、ネリーのおばあちゃんが亡くなる。話の流れから母方のおばあちゃんなのだと思う。
父と母と娘ネリーの親子三人は森の中にあるおばあちゃんの家を訪れる。
おばあちゃんとの思い出の詰まった家で、おばあちゃんの荷物を片付けながら寝泊まりするが、母親は心が辛くなり、父親とネリーをおばあちゃんの家に残し、先に帰ってしまう。
ある日、ネリーは庭でゴムひもの付いた球をラケットで打って遊ぶが、ゴムひもが切れ、球を森の中に打ち込んでしまう。
ネリーは森の中に球を探しに行くが、そこにいたひとりの少女と出会い友達になる。
そして、ネリーは少女に誘われて、その少女の家を訪れるが、そこはおばあちゃんの家で、その少女の名前は母親と同じマリオンだった。
…という話なのだが、ファンタジー感はなく、淡々とストーリーは進む。
何か、もうひとつ感情的に訴える部分があればよかったのではないだろうか。
なかなか入り込みにくい抽象芸術作品と言えるかもしれない。
#158
ファンタジーな母娘の愛の物語
掌中の珠のような一本。とは言え・・・・。
〔燃ゆる女の肖像(2019年)〕の監督/脚本の『セリーヌ・シアマ』の最新作との触れ込み。
現時点での評価は「IMDb」で7.4、
「Metascore」でも93と、極めて好評。
とは言え、73分の極短尺。
登場人物も実質五人と過少で、{ワンシチュエーション}に近い造り。
元々、映画ではなく、本国ではTVドラマなんじゃないの?と
勘ぐってしまいたくなる。
フランス映画だけあって、
「CANAL+」や「CINE+」が制作に入っているのは毎度のことだけど。
物語の骨格は至極シンプル。
母方の祖母が亡くなり、孫の『ネリー』は両親と一緒に、
嘗て祖母が住んでいた森の中の一軒家に片づけに赴く。
母親は溢れる想い出にいたたまれなくなり、
中途で帰ってしまうが、『ネリー』と父親は整理を続ける。
そんな中、彼女は母親が嘗て森の中に作った秘密基地を思い出し、
その場所に行くと、そこには見知らぬ少女が。
『マリオン』と名乗るその少女は、外見も『ネリー』そっくりな上に、
年齢も八歳と同じ。
直ぐに打ち解け、誘われるまま『マリオン』の家を訪れれば、
そこはまるっきり祖母の家だった・・・・。
時空を超え、過去の母親と邂逅するとの一種御伽噺も、
それが明らかになるまでの小道具の使い方が甚だ巧い。
食器棚の裏に残っていた古い壁紙
母親が幼い頃に使っていた(誤字の多い)ノート
足の不自由なおばあちゃん愛用の杖
祖母から孫に受け継がれた、クロスワードパズルへの嗜好
等々。
観客にそれとなく提示しながら、
自然に結論へと誘導する。
まぁ、原題自体〔PETITE MAMAN〕だから、
ネタは最初から開陳されてはいるのだけど。
また、タイムパラドクスもちゃんと考慮されており、
現在の母親と幼い母親が、同一空間に居ることはない。
不思議な二人の交流は、長続きしない当然の理由があり。
しかし、別れても、また直ぐに会えるとの、当然の環境もある。
衝撃的なエピソードを盛り込むことなく、なんとも心温まる展開で、
最後には母親との心の和解が示される。
一本の作品として観れば素晴らしいのだが、
これを通常の価格で売ることには
冒頭に挙げた理由から疑念を抱いてしまう。
もう少し、低価格にならなかったものか。
ママが外出したわけは
ごっこ遊び
自分の子ども時代を思い出した。あんなに美しい平たい森でなくて、崖みたいな山みたいな草ぼうぼうの林の中に自分たちの基地を作って内緒で子犬を飼った。妹と空想のお話を作って二人でゲラゲラ笑った。そんなことを思って、もうその時間にも空間にも戻れないと思ったら悲しくなった、少し。おばあちゃんはとっくに死んでしまった、母親の死も遅かれ早かれくる、そして自分も。悲しいのは死ぬことでなくて自分の記憶が死と一緒になくなることだ。その大人の悲しさを子どもの自分と同い年の自分の娘に慰めてもらう。それができたらどんなにいいだろう。
コスチュームはシアマ監督担当!子ども二人の服や靴下の色と素材がいいなあと思った。薄いブルーが基本トーンの家の中は、誰か居てもシーンとしている。でも怖い所ではなかった。暖かくて美味しい場所だった。二人の子どもの可愛らしさと大人っぽさ、悲しくてもその感情の表し方がまだわからない年齢だってことは思い当たる。
森、川、木の小屋、色づいた葉の美しさ、透明で冷気ある空気をたくさん吸い込んだ。ずーっと音楽なし。だからボート遊びの箇所でいきなり女声コーラスが入ったのは驚きで曇り空に太陽が顔を出したようだった。
傑作
普通の森
セリーヌ・シアマ監督による傑作!
オンライン試写会にて鑑賞。
あの傑作『燃ゆる女の肖像』を作ったセリーヌ・シアマ監督の新作ということで期待大きかったが、期待を裏切らない見事な映画であった。
本作を観ている間、「えっ、何?」、「どうなってるの?」と思いながら鑑賞することになるが、観終わって「この監督、ホントにすごい映画を作るなぁ~」と思わされる。
冒頭、8歳の少女が病院の個室に次々と入っていって「さよなら!」と言って回る。そして、自分の母親が個室の片付けをしている。少女の祖母が亡くなったのだ。
少女ネリーは、両親の車で祖母が住んでいた森の中の一軒家へ行くのだが、この家で少女時代を過ごした母親はツライ思い出に耐えかねて家を出て行ってしまう。
残された少女ネリーは、森を散策していたところ、自分と同い年の少女と出会うのだが、その少女の名前はマリオン。母親と同じ名前。
森の中で少女ネリーは、少女時代の母親と出会ったのだ……という不思議な展開となっていく。
(※)そのあとは割愛。
「おとぎ話のような物語」でありファンタジー映画と言うような作品だが、『タイムワープもの』という側面も自然に取り込みながもそれを全面に出すわけでなく、過去と現在をシームレスに溶け込ませたような演出は見事!……というしかない。
この映画、尺はさほど長くない73分の作品であるが、頭をフル回転させられて、観終わった時には「全部を把握できたわけではないけど凄い!」と思いながら、「また映画館で観たい!」と思わせてくれる傑作映画だと思う。
次に観る時には、もう少し、映画の奥深いところを理解するようにしたいと思う。
<映倫No.49238>
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