劇場公開日 2022年9月23日

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「久々に映像だけに浸る」秘密の森の、その向こう シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0久々に映像だけに浸る

2022年11月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマが監督・脚本という事らしいですが、正直言って私はこの『燃ゆる~』の方はあまりピンとこなかったというか、個人的にLGBTものの作品自体に苦手意識があるみたいなので、その種の作品には積極的には手を出さない人間なのです。
で、本作はLGBTものでなかったせいなのかどうかは分かりませんが、やっとこの監督の凄さや才能を冷静に理解出来たというか、私にとってはほぼ完璧な作品でした。

でも公開時は鑑賞を見送ったのに何故再映で鑑賞したのかというと、私が最近よく見るYOU TUBEの、社会学者で映画批評家の宮台真司氏の動画をたまたま見て本作を絶賛していたので急遽観たくなったのです。
この宮台さん、非常に辛口の批評家で社会や政治については、普段自分が思っていても中々言語化できないモヤっとした感覚を見事に言語化してくれるので、最近けっこう贔屓に動画を見ているのですが、その宮台さんが本作については、傑作だと絶賛している割には何が良かったのかは、いつもの歯切れはなくボンヤリとした表現で素晴らしかったという程度だったので、何処がどう良かったのかを確かめたくて鑑賞しました(笑)

で鑑賞して今まさに感想を書こうとしている訳ですが、傑作であることは間違いないのですが、私も何が良かったかを具体的に言語化するのはちょっと難しく、何から書こうか迷っています(苦笑)
暫く考えたのですが、そもそも論で言うと映画(芸術)って元々が言語化出来ないものを映像で表現する道具ではないのか?という事に立ち返りましたよ(爆)
しかし、商業映画・娯楽映画という表現ばかり観ていると説明が無いと分からない人達が増え、そういう人達が本作を観ても説明はほぼ無いので難しいという事になるとは思いますが、言語化して説明し難い微細な感覚や感情をテーマとして扱う作品の場合、如何に直接心に訴えるかの伝達手段として、その最大の武器(表現方法)として存在するのが映像でありアートだと思います。
本作の場合、誰の人生に於いても絶対について回る“別れ”“決別”“孤独”“哀しみ”等々、その時に湧き上がる感情をたった73分で映像表現するセリーヌ・シアマ監督の才能に驚嘆させて貰いましたが、冒頭車を運転する母親の口に後ろから娘がお菓子を入れるシーンからラストシーンまで、ずっと一貫して母と娘の繋がりの作品でした。

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シューテツ