「会話の内容、間の入れ方が、まさにホン・サンス監督作品的としか言いようのない一作」イントロダクション yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
会話の内容、間の入れ方が、まさにホン・サンス監督作品的としか言いようのない一作
ここしばらく上映時間100分前後のコンパクトな作品を精力的に発表している、ホン・サンス監督の作品です。
随所で登場する二人の登場人物が間を取りつつ対話を重ねていく場面は、この監督の作品で頻出する、持ち味といってもよい構図です。「あれっ、この場面って別の作品でも観なかったっけ?」と既視感に襲われるほどに。
『小説家の映画』(2023)など監督のいくつかの先行作と同様、本作はモノクローム作品です。しかしややコントラストが強めだった『小説家の映画』とやや画調が異なっていて、中間域の諧調表現が非常に豊かで、その滑らかさが強い印象を残します。
登場人物たちは終始穏やかな口調で会話を交わすものの、いったい彼らがどんな関係で、なぜここにいるのか、といった背景描写が多いとは言えないため、少なからぬ観客は「今一体何を見せられているんだろう?」と戸惑うことになるでしょう。
ただその種明かしが完全になされることは結末までないし、関係性も背景も見えなくてもなんとなく余韻は残るので、あまり一つ一つの描写の意味を考えこまずに観る、という姿勢が最適解かも。
本作に限らずサンス監督の作品の字幕は非常に丁寧な言葉づかいが印象的です。おそらく原語の表現に忠実なんだと思いますが、原語の韓国語のニュアンスが実際はどのようなものなのか、気になってきました!
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