劇場公開日 2022年2月18日

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「ひたすら我慢の映画です。最後に心を動かせます。」白い牛のバラッド いなかびとさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ひたすら我慢の映画です。最後に心を動かせます。

2022年2月26日
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鑑賞方法:映画館

冤罪により夫が死刑執行された妻とその死刑判決を下した元裁判官の物語です。寛容と償罪のイラン映画です。
イスラム教やイランの刑事法制度を知っていないと理解が難しいと言う評者もいますが、そんなことはありません。死刑制度反対の意図も少しはあると思います。でも、私が感じたのは、先に述べた寛容と償罪はどのようにしたらいいかです。
今のイランは、イスラム教を骨格として国家運営されていると聞いています。私達のいる民主主義国家ではありません。未亡人に聾唖の娘がいたり、元裁判官には不和な息子がいたり、またその息子が兵役について死んで帰って来たりと現実の厳しさを表しています。元裁判官は官憲に監視されたり、未亡人は訪れた男性を家に入れただけで、家主から退去させられるなど宗教国家イランの閉鎖社会を描いています。この二人は声をあげて訴えたり、悔やんだりしません。淡々してそと見では現実を受け入れているように見えます。おそらく、現在のイラン人を表象しているのでしょう。だから、山がなく退屈極まりない。最後の夕食の場面で、未亡人の心の内が明かされ揺り動かせます。それまでが本当に我慢の映画です。牛はイスラム教の神に捧げる御供物の意味らしい。人間は全て神に捧げる御供物とだと私は解釈しました。最後の場面がなければ、星一つ減点していました。私が聞いた話では、日本にも死刑執行された方で冤罪ではないかと噂されている人が1人いるそうです。勿論、法務省はだんまりです。死刑制度を揺るがしかねません。

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いなかびと