鬼平犯科帳 血闘のレビュー・感想・評価
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池波正太郎・生誕100年記念映画
鬼平こと長谷川平蔵は、1745年生まれの実在した人物だとか。
武士の息子に生まれたが、若い頃はひどい放蕩者だった。
鬼平は、今で言う凶悪犯罪を取り締まる《火付盗賊改方の長官》だった。
どの位偉いのか想像はつかないが、ともかく偉そうな役職みたいだ。
ところで、映画はいきなり若い侍風の男が不機嫌に飲み屋で酒を飲み、
盃の酒を放り投げて出ていく。
この男が鬼平の若い頃だと、やがて見ていくと分かる。
鬼平を松本幸四郎そして若い頃を息子の市川染五郎が演じている。
聞くところによると、時代劇専門チャンネルで、1話を放映後の2話が
映画化されたこの作品だとか。
道理でと言うか、途中から始まった感じは否めない。
この映画の題名は「血闘」・・・なぜ素直に「決闘」ではなく血を使い
「血の闘い」としたのか?
憶測だが、この映画の悪党が並外れていて、強盗一味の首領は一度に
押入った店の金を盗む際に、証拠を残さぬために、店主一家の幼い子供から
雇人まで一度にあるときは15人、次の押し入りでは25人を情け容赦なく殺す
極悪人だから、鬼平とその首領の攻防は血で血を洗う「血の闘い」・・・
と書くのだろうか。
鬼平は松本幸四郎がややニヤけた表情だなぁ、と思ったが、
見ていくと肝の座った豪胆な男で腕っ節がやたら強い。
剣の腕前も相当なものだが、この映画、やや狭くるしいところで
立ち回りをしている。
もう少し広々とした場所での立ち回りを見たくなる。
オールスターキャストで中井貴一、柄本明、火野正平、本宮泰風、など。
でも本筋に絡んで来るのは、火盗(盗人)の柄本明そして、女スパイと言うか
鬼平の幼馴染みで平蔵を好きだった女の“おまさ“
おまさを中村ゆりが魅力的に演じていて、この映画になくてはならぬ
ストーリーを先導していく役回り。
“おまさ“の平蔵を思う気持ちの強さ、そして美しさと度胸が、胸を打つ。
今風に言えば潜入捜査官か!
若い女が危険極まりない仕事を命からがら務める姿は、
細腕で華奢な中村ゆりだが、この映画での彼女の働きは、
惚れ惚れする女っぷり!!
肝心要の悪役。
本作では北村有紀也が堂々と憎まれ役の堀切の甚五郎を務め上げた。
押しも押されぬ曲者役者になりましたね。
ラストの平蔵と果たし合い・・・もう少し見応えある殺陣をみたかったが、
死にっぷりは見応えがありました。
また火野正平さんが遺作なのか、飄々とした元気な姿を
見せてくれて、しかと目に刻みました。
そして大ベテラン・柄本明、やはりうまさはべらぼうですね。
新感覚とか捻りとかない本格時代劇。
雰囲気が良く、とても楽しめました。
シリーズ化しちゃえ
久しぶりに
江戸情緒にやや欠ける
人間国宝・二世中村吉右衛門丈が身罷られて早や2年半、彼が主演した鬼平犯科帳の最終回がTVにオンエアされて既に7年半が経とうとしています。
改めて彼の偉大な足跡と独特の芸風を偲ぶ思いで本作を観賞しました。
人口に膾炙した名作の映画化とはいえ、時代劇に馴染みの薄い令和の世であるゆえに、事情背景の説明が多く、前半はややモタつき感がしましたが、悪党と悪事がはっきりした後半はスリル感とスピード感が加速していき、観客をハラハラさせて非常にテンポが良くなっていきます。前半は、鬼平が無頼の徒だった青年期に時間を費やしていてもどかしくも思いますが、ここが作品全体の大きな伏線になっています。
後半は、しだいに北村有起哉演じる網切りの甚五郎の極悪非道ぶりが際立っていき、その反動として観客は、鬼平の勧善懲悪ぶりへの感情移入が強まりグイグイ惹き付けられました。そこで演じられる殺陣は、剣捌きの鋭さと速さ、足さばきと体の動きのキレ、腰の据わり方と重心移動の円滑さ、静と動のメリハリが利いていて、大いに見応えがありました。ただ集団での多人数を斬り倒す立ち回りばかりのため、鬼平を演じる松本幸四郎や若い鬼平を演じる市川染五郎の殺陣の技量は判断しかねます。何シーンかは1対1での立ち合いを入れてより迫真性と緊迫感を増して欲しい思いです。
とはいえ、次々と繰り広げられる、たった1人で多人数を相手にする殺陣シーンは、息呑むスリルと圧倒的迫力があって体ごと惹き込まれます。化け物屋敷への一人での討ち入り、罠に嵌められた料亭・大村での騙し討ち、そこから逃げた網切り甚五郎を追った先での立ち回り。多くのカラミをただただ斬り捨てていく殺陣なので、上手さよりも勢いと力強さが漲っていて鬼気迫るものがありました。
そして池波正太郎作品に欠かせない料理映像。芋酒、芋飯、軍鶏鍋は、全て食欲をそそります。食べ物を撮るカットの割り方、微妙なカメラアングル設定、そして鍋や釜、徳利と猪口、卓袱台といった味わい深い設い、これらが相俟って炭の熾った臭い、汁の煮立つ香りが、観客席まで間違いなく薫ってきていました。
カメラ(江原祥二)、照明(杉本崇)、美術(倉田智子)、スクリプター(竹内美年子)、床山(大村弘二)、監督(山下智彦)、京都の現場で鍛え上げられた、日本でも一級の練達たちが腕を振るい各々の技量と才覚によって、一流の本格時代劇に仕上がったと思います。
ただ難を言うと、続編はテレビ放映されるためにテレビ画面風に寄せアップが多過ぎて、その時々に全体像が見えなかったこと、幸四郎の鬼平が吉右衛門の鬼平に比して、ユーモア感は増していたが、それゆえに吉右衛門鬼平が有していた、あの何とも言えない男の艶気が感じられなかったこと、勇壮さ、凛々しさ、精悍さ、といった男っぽさが前面に出て仕上げられていて、それはそれで痛快であり、極悪を成敗した後のカタルシスも得られたのですが、吉右衛門鬼平にあった情感や哀愁には欠けていたことです。
男と女、親と子、友と友、温かくも哀しい人と人との絆の深い情感を、その時代の中でリアルに感じさせる江戸情緒。これをドラマの中で醸成するのが江戸に見立てた景観と造作であり、江戸の食べ物です。
本作では、食べ物は巧く撮られ、家の造作は江戸感覚が漂っていましたが、スタジオやオープンセットでの撮影が多く、京都各地を江戸に見立てたロケ撮影が少なかったように感じます。そのためにしみじみとした江戸情緒感が醸しきれなかったように思います。
観賞後、プロローグでの、鬼平を訪れた‘おまさ’が役宅から出てくる処を上空から撮ったカット、この滋味深い鯔背な美しさと江戸を感じさせる空気感が、残像として強く脳裏に刻まれていました。
顔作りすぎ
中村吉右衛門の鬼平は最高で誰も変わりにはなれないと重々承知の上で、それでも新たな鬼平が観られるのではないかと期待しながら鑑賞。
最初に松本幸四郎の顔がアップになったところで、作りすぎた表情にすでにギブアップの気分。
監督の演出によるものなのか、松本幸四郎が映画的な演技ができないのか定かではないが、もっと自然な演技はできなかったのだろうか。
いかにもな作られた表情には感情の機微を感じることができず、終始作られた顔ばかりが気になってしまった。
他の出演者は総じて好演していたと思うが、鬼平の厳しくも優しく人情あふれる人柄が表現できなかったのは致命的だった。
新鬼平犯科帳
最高の時代劇。
登場人物にしっくり
新シリーズは見たことがなかったので、長谷川平蔵=中村吉右衛門、おまさ=梶芽衣子のイメージとのギャップを心配していましたが、どちらもしっくり来てよかったです。ただ松本幸四郎はまだ若いためか、「鬼」の表情や、べらんめえ口調などの江戸っ子ぶりがまだまだだとは思いました。中村ゆりは以前から好きな俳優さんで、特に少し陰のあるような魅力的な微笑みに惹かれますね。シングルマザーを演じていた日本生命のCMは、CMとは思えないような演技で毎回泣きそうになってしまい、いつも見入っていました。(見たことがない方はぜひyoutubeで)
鬼平のあまりの強さにはちょっとやり過ぎの感はありましたが、脚本的にも破綻はなかったと思いますし、楽しんで観ることができました。あと、個人的にツボだったのは、「日本統一」の2人の主人公の本宮泰風と山口祥行が善と悪の立場で共演していたことですね。できたらこの2人の対決も見せてほしかったです。
時代劇の王道は、実在した江戸時代のひとり"ワイルドセブン"
まさに、娯楽時代劇!そして、女たちが主役だ!!
これは、女たちが主役だ!
おまさ、おろく、久栄 みんなカッコ良かった!!
鬼平よりもカッコ良かった。
でも、このように素敵な女たちが集まってくるのは
鬼平に魅力があるからなんだろうな。
うん、松本幸四郎さんの鬼平、良かったです。
きちんと、女を守ってくれるヒーロー。
北村有起哉さんの狡くてヘタレなヒールもハマっていた。
柄本明さんは、本当にいろんな作品に出ていらっしゃるなー、
そして、いつもいい味出されてて、スゴい。
浅利陽介さんの、相棒の青木みたいな弄られ役も安心する。
キャスティングもハマっていて、時代劇らしい演技も、
みんなお上手で、あっという間だったな…。
まさに、娯楽時代劇!!
ただ、ラストの小野十条のくだりは、どういうこと…?
「日本一の俳優」
「手前で賽を振る」に共感しました
その火、絶やすなかれ
好きです時代劇。"変わらないもの"としての需要が強過ぎて進化が難しいジャンルではありますが、ここ近年試行錯誤しながら"温故知新"な世界の構築に邁進なさっている様に感じて嬉しさもひとしおです。そんな中での「鬼平」。皆の中には強烈に推している鬼平(小説含む)があると思うので難しいネタ(というか原作ものは大体そうか)ではあるのだろうけれども、これからの鬼平を期待させてくれる作品に仕上がっておりました。まだまだ"荒さ"を残した感じの鬼平が、危うくもありチャーミングでもありで、周囲に慕われるのが納得の造形。血気盛んで触れるものみな傷つけそうな若い頃の鬼平も良かったですね。時代劇専門チャンネルには"梅安"共々がんばって抱きたい所でございます。
可もなく不可も無い時代劇になってしまった
時代劇が好きなんじゃない。
中村吉右衛門さんが主役のテレビドラマの鬼平犯科帳が好きなんだ!
そんな私からすると普通の時代劇になってしまった鬼平犯科帳は残念だ。
リメイクされたのはうれしいが
中村吉右衛門さんの偉大さ、当時の製作チームのすばらしさ
当時の配役の素晴らしさ、ナレーションの良さが際立ってしまった。
あの作品はまさに奇跡。
現在の俳優ではどうにも上回れないと思った。
■役(キャラクター)がしっくりこない
悪役は良かった。
鬼平が鬼のように見えない、威厳、風格、昔やんちゃだった間が足りない。
甘やかされて育った殿という感じ。
おまささんがこぎれいな町娘に見える。
ひこじゅうは酒好きのいい加減オヤジに見えない(悪いすごみがある)。
おやじのとぼけ加減が足りない(すごみがある)。
■私が勝手に考えたキャスティング
鬼平:渡辺謙か真田広之
奥さん:片平なぎさ
おまさ:井上和香か仲間由紀恵
ひこじゅう:酒井敏也か加藤茶
木村ちゅうご:オードリー若林か香取慎吾
引き込み役:板野友美
芋酒屋のおやじ:伊東四朗
さじま:西川きよし
ねこ殿:西村正彦
またまだ時代劇は滅びませんね
時代劇もちょっとコメディがかったものは今までみてきましたがこんな本格的なものは初めてです チャンバラの衣装やかつらのスタッフさんが減っていき時代劇もダメになるのかなと思っていましたが今回これをみてこれは残していかないとダメだし残っていくジャンルだと感じました。もっとみたですね。
因果応報
火つけ盗賊改めに就任して間もない長谷川平蔵の所に、昔なじみのおまさが訪ねてきて「犬(手下)にして欲しい」と申し出るが断られる。一方、平蔵が厳しく取り締まっているにもかかわらず、江戸では凶悪犯罪が増えているようだ……
初鬼平です。中村吉右衛門さんの鬼平が面白かったと聞いていたので、一度観てみたいと思っていました。このシリーズは、鬼平が正規の部下と犬たち(密偵)を駆使して悪を叩きのめす、痛快時代劇なんだなと思いました。現代でいうところの警察ものであるので、チームワークで事件を解決するシリーズではないでしょうか。鬼平初心者としては、彼らの胸のすくような活躍が観たかったですが、今回は番外編のような内容で、鬼平の独り舞台な感じでした。個性的な部下たちがあまり活かされていませんでした。
闇夜に浮かび上がる「火盗」の提灯は印象的です。江戸の町民は、それが近づいてくるのを見て安堵するのでしょう。
松本幸四郎さんは風格も華もありますが、シャープさやストイックさに欠けます。個人的な好みですが、市川右團次さんだったらどんな感じだったかなと思います。佐嶋役の本宮泰風さんはビシッとしてカッコ良かったので、続編ではもっと活躍して欲しいです。
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