「見所は多いが、中途半端」Arc アーク ユウコさんの映画レビュー(感想・評価)
見所は多いが、中途半端
原作未読。
がっつりSFというのではなく、レトロフューチャー的。「わたしを離さないで」や「リトルジョー」「ビバリウム」みたいなのを狙ってたのかな。
雰囲気のある画面と静かな音楽。前半は死体を新しい剥製?にする会社の話で、結構エグいシーンも。
前半はカメラのせいか、画面が暗くて荒い(邦画でよく見る)。奥行きもあまりなくて、せっかくの雰囲気のある建物も安っぽく見えるのがもったいない。しかし、モノクロのシーンは美しい。全編モノクロで良かったのに
その会社の代表エマ(寺島しのぶ)が引退し、跡を継いだ弟アマネ(岡田将生)はずっと不老不死の技術を研究開発していたが、ついに実用化される。老化しない人と今まで通りの人に世界は二分される。
こういうスパンの長いストーリーは話を進めるだけで手一杯になりがちだが、この作品も登場人物それぞれの葛藤を描くことはなくただただ流れていく(とはいえ、寺島しのぶは、死体を物と言いながら、自分のパートナーには執着し思い通りにならないアンビバレンツを短いシーンで表現してる)
ヒロインに関しても十分描かれているとは言えず、ただ周りの人に引っ張られて流されるだけに見える。
昔産み捨てた我が子との再会も、夫に「その子の名前も知らない」と言ってたのに、実は自分の両親が育てていたらしいことが示唆され(じゃ、知らない訳なかったんじゃ…)と見ててずっこける。だから、捨てた子に対する後悔とか執着とかもなかったのでは?と思ってしまうのだ。ヒロインにとって「生きる意味」ってなんなんだ?
なにより、不老不死の処置を受けたら「死ねなくなる」のかと思ってたのに、老いることも死ぬことも選べたのか!と。だったらあえてその処置を受けないことの意味が軽くなっちゃうよなあ。
生と死の意味についてがテーマだったのかもしれないけど、消化しきれなかったという印象。