「14歳の多感な時期を写した群像劇的なドキュメントです。」14歳の栞 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
14歳の多感な時期を写した群像劇的なドキュメントです。
以前から少し気になってた作品を鑑賞しました。
前情報は殆どいれてなかったので、なんとなくドキュメントらしいぐらいしか知らなくて、どんな内容でシビアなのか、青春物なのかも分からず。
とりあえず、鑑賞した池袋の「シネマ・ロサ」は都内でGWでも空いている数少ない映画館。
作品としてはそんなに混む様な感じの作品と思わなかったんですが、ソーシャルディスタンスが保たれた席調整でしたが満席でした。
で、感想はと言うと、う~ん。
正直難しい。決して悪い訳ではないが個人的な好みで評価が分かれそう。
ドキュメントと分かっていても起承転結も盛り上がりも特に無い。
クラスの中心的な感じの子は居ても主役は居ないし、脇役も居ない。
満遍なく写しているので持ち当ての時間が来たらお仕舞いみたいな感じ。
全員が主人公と書くとなんかチープに感じるが、群像劇と言った方が正解。
なので、個人的には映画と言う感じがあまりしない。
なんか「ザ・ノンフィクション」を見ている感じ。
でも、なんか観ている側に静かな楔を打ち込む様な何かを感じさせてくれる作品。
冒頭に流れる馬のシーンは意味は分かるけど、あれって要ります?
個人的にはあの手法は映画っぽいけど、その後に続くドキュメントに対して余計な味付けをしている感じがなんかするんですよね。
春日部にある中学校の2年6組の35名の生徒達の終業式前の何ヵ月かを撮影していて、それぞれの日常や考え方、悩みや問題なんかを写し出されているが、特に問題があっても解決もせず、また解決をしようともしない。
ノンフィクションのドキュメントなので、それで良いと言えばそうなんだけど、面白いかと言われたら、正直面白いと言う感じではない。
自分の中学2年生の時と照らし合わせて、“うんうん、あるある。自分の場合はこうだったなぁ~。今はこうなんだ~。…今もあんまり変わんないなぁ…”と思うぐらい。
でも、いろんか事を割りと赤裸々に写し出されていて、昨今の個人情報がいろいろと取沙汰される世の中で、よく作り上げたもんだと感心してしまった。
それ以上でもそれ以下でもないけど、大人が観たらそうであっても、多感な思春期の中学2年生にしたら、結構恥ずかしいと思う事も多々あると思うだけにそこだけは感心してしまいます。
あと、なんか突拍子も無い子がいなかったのがなんかホッとした。
あの歳なら将来は「アイドルになりたい!」とか「プロのサッカー選手になって、海外で活躍したい!」なんてのはザラで中には「YouTuberになりたい!」「eスポーツで一稼ぎしたい!」なんてのがいてもおかしくないのにいなかった。
堅実と言えば堅実でそんな事を言えば、周りから冷ややかな目で見られるのを気にしていると思えるのは多感な中学生らしい。
でも、あんまり無難と言うか「公務員になって安定した生活を送りたい」なんて聞くとちょっと寂しいなんて思うのは歳を取ったからなんですかねw
劇場で鑑賞前に「登場する2年6組の生徒達は実在する者達なので、必要以上にSNS等でネガティブなカキコミはお止め下さい」と言う文章のわら半紙を貰った時は微笑ましく思いましたが、エンドロール後に同じ様な文章のメッセージが出たのはちょっとやり過ぎかなと言うか、変に煽らないか?と心配してしまう。
「こんな事を言わなくても、そんな事はやらないだろ」と言う意見もあるかも知れないけど、SNSの怖さは今更ながらなので、なんか寝た子を起こす様な怖さを感じるんですよね。
先日観たチェコの「SNS 少女たちの10日間」でもまざまざとネットの怖さが描かれていたので、ちょっと心配になってしまいましたのと、制作側はその辺りを何処まで考慮しているのかが気になりましたが如何でしょうか?
でも、なんて事の無い中学2年生の数ヶ月は遠く過ぎ去った者からすると、物凄くキラキラとした時だったと思えるだけに、物凄く眩しく映りますw
だからこそ、必要以上にドラマがいらないのかも知れない。
また、14歳ってなんか特別感はありますよねw
大人だからこそ、そう思えるのかなと思うので、この一編を写し出そうとした竹林監督の非凡な才能を感じます。
何よりもこのタイトルが良いんですよね。
最初は14歳の栞と言う名前の女の子の物語かと思いました。
でも、そこに描かれているのはクラスメートからの執拗な虐めとか… だったら嫌だな…と思ったら違ったw
可愛いらしい響きの栞に何処かアンバランスな感じの「14歳」。
栞は一般的には本の途中までの読んだ目印にする物のイメージですが、他にも意味として
・木の枝を折って道しるべとしたもの。
・切る。掘る。
・案内や手引き。
があって、由来の成り立ちも「幵」は平らにそろえられている様子を表し、これに「木」を組み合わせて木を削ってできた「道しるべ」の意味が生まれた。との事。
また、訓読みでしおりと読むのが一般的だが、他に「きる」とも読めるし、音読みで「かん」とも読む。
かんと言う言葉の漢字には感、間、関、観、幹、敢、甘、完、etc etc…なんかもある。
14歳と言う言葉の意味に「かん」と音読みをして、様々な漢字に当て嵌めるといろんな意味にも取れる。
また、本に使う栞も普段はあまり気にする事なく使っているけど、実はいろんなデザインもあって多種多様。
詰まる所は目印になれば何でも良いと言うフレキシブルな感じと無料の物が沢山ある中で秀逸なデザインやイラストで思わず買いたくなる様な物もある。
人生と言う「本」の中で14歳と言うページに挟まれたブックマークと言う意味で考えれば、かなり深い所まで考慮されたタイトルと思いますが、…考え過ぎですかねw
あと、エンドロールに流れるクリープハイプの「栞」は出来すぎですねw
でも、あのドローンで撮影されたエンドロールは好きだなぁ。
前の方で歩いていたり、真ん中で仲の良い子達と談笑しながら歩いていたり、後ろの方で自分のペースで歩いていたりとそれぞれの性格が出ている感じで。
頭の良い子、勉強が苦手な子。
運動が得意な子・苦手な子。
友達付き合いが得意な子・苦手な子。
気が強い子・気が弱い子。
気が利く子、優しい子、ちょっと前に出過ぎる子。ちょっと鈍感な子。
背が高い子・低い子。
ちょっと太っている子、痩せている子。
ルックスに自信のある子、そうでもない子。
器用な子、不器用な子。
いろんな個性があっても、皆、共通しているのは14歳。
他人から強く見られたり、弱く見られたりしても、芯は純粋でポキリと折れそうで、自分の将来に希望と不安を抱えている14歳。
そう考えるとその時自身が映画の様なんですかね。
将来、どんな大人になりたいか?の問いに「カッコ悪い大人にはなりたくない」と答え、どんな大人になりたくないか?に「社畜」と答えたのには笑ってしまった。
本当にその通りなんですよね。
児童の答えは真理だったりしますが、14歳の子達が考える事は願望。
でも、そうなるか、そうならないかはいくらでも修正も出来る年齢。
劇中で「14歳はもう遅い」と言っていたけど、全然遅くないですw
最初に書いた様に映画としては非常に弱くて、観る人を選ぶ作品である事は間違いない。
でも、結構意欲作でもあるかと思いますし、観ない事には始まらない。
なので、興味と機会がありましたら、如何でしょうか?