劇場公開日 2021年3月5日

「自分があの頃挟んだ栞を開くくすぐったさ、クリープハイプが染みる良作」14歳の栞 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自分があの頃挟んだ栞を開くくすぐったさ、クリープハイプが染みる良作

2021年3月31日
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鑑賞方法:映画館

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 大人になりたくて、大人になりたくないなんて思っていたあの頃。学級委員をしていた自分には、今の自分はどう写るのだろうか。挟んだままだった栞を再び開かせる良作。

 中学校が世界の全てだったあの頃に、クラスを見渡す余力なんてなかった。空気を読んだり、周りとバカをやったり、恋をしてみたり。そんな刹那がワッと蘇るような感覚。そして、自分という36人目が共に走り回っているような気がした。
 ある中学校の2年6組。クラス全員、14歳。ムードメーカーからネクラ、闇を抱えた子から気にかける奴がいる子まで…35人の人間模様がある。それぞれ部活に所属したり、夢中になるものがあったり。それも今しかなかったのだと思うと懐かしかったりする。しかし、そう思われている彼らだって、大人になりたかったり、やり直したかったりするのだから面白い。
 インタビューを挟みながら、クラスとしての自分やその環境、将来像を描いてゆく。淡々としながら、あるあるばかり出てくるので飽きが来ない。ペン回しにくっつき合う女子、バレンタインのソワソワだったり、必ず観てきた景色が重なる。
 当然ながら彼らにも長い人生があるので、名前を出すことは控えておくが、個々の考えが浮き彫りになるインタビューは発見の連続だった。静かな子には理由があるなんて、今まで考えたこともない視点だったし、友達のイジりも戦略だったのかと思うとくすぐったかったりする。また、楽しく過ごせるように努めていても、友達ですら気づけない棘だってある。そんな小さな世界を、14歳は全てとして受け入れて歩いてゆく。
 3学期までの短い間で、35人を丁寧にスポットしていたスタッフに感服である。起きていることと思っていることを拾って組み立てる、その単純作業で築かれたドキュメンタリーは感動を呼び寄せる。ただ、強いて言うなら、クリープハイプの『栞』が出来すぎている。歌詞を知っているだけにリンクしすぎて、映画を食っていた。ただ、これは主観であり、涙の蛇口をひねったのもこの曲なので仕方ない。笑 これからフェスで聴くのが楽しみだ。

 ぼんやりとした未来と、逃げられないような今を過ごす中学生。となりにいたあの子だって観たら分かるはず。学校という世界のありふれた奇跡がここまで綺麗だったとは。もう一度授業参観=再見しようかな。笑 学校の先生にこそ効く薬のような映画。そして、友達に教えたくなる作品だ。

たいよーさん。